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臨床栄養学

26-138 50歳、男性、身長165㎝、体重70㎏。C型肝硬変と診断された。両下肢の浮腫、腹水、黄疸を認める。血中ヘモグロビン値9.6ℊ/㎗、血清アルブミン値2.9ℊ/㎗、血中アンモニア値188μℊ/㎗。食事療法の方針に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)食塩摂取量は、6ℊ/日とする。
(2)飲水量は、300㎖/日以下とする。
(3)脂肪エネルギー比率は、35%とする。
(4)たんぱく質摂取量は、90ℊ/日とする。
(5)鉄摂取量は、20㎎/日とする。

(1)○ 食塩摂取量は、6ℊ/日とする。
 浮腫、腹水があり、血清アルブミン値が低下しているということは、膠質浸透圧低下により血管内から血管外に水分が移動して、体液量が増加していると考えられる。循環血液量の減少は、腎血流を減少させ、レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系を活性化して、ますますNaと水分の貯留を亢進させる。これを防止するために、5~7ℊ/日の減塩食にすることは正しい。

(2)× 飲水量は、300㎖/日以下とする。
 浮腫。腹水に対しては、減塩食で対応し、原則として飲水量の制限は行わない。ただし、尿量が減少しているときは、前日の尿量+500㎖に飲水量を制限する必要がある。

(3)× 脂肪エネルギー比率は、20~25%とする。
 肝疾患では、従来、高エネルギー、高たんぱく食が推奨されてきたが、それは食糧事情が悪かった時代の名残である。現在は、日本人の食事摂取基準を目安に摂取エネルギーと栄養素の配分が行われる。

(4)× たんぱく質摂取量は、0.5~0.7×70=35~49ℊ/日とする。
 浮腫、腹水、黄疸があり、血中アンモニア値も上昇しているということは、肝臓機能が体内の恒常性を維持できていないことを示している。すなわち、非代償期肝硬変である。非代償期にはたんぱく質の分解により発生するアンモニアを処理できなくなるので、高アンモニア血症になる。このような状態をたんぱく不耐症という。たんぱく不耐症があるときは、たんぱく質を0.5~0.7ℊ/㎏/日に制限する。窒素源の不足分は、分岐鎖アミノ酸で補充する。

(5)× 鉄摂取量は、7㎎/日以下とする。
 C型肝炎では、肝臓に鉄の蓄積がみられ、活性酸素の発生により肝細胞障害、線維化を促進する可能性がある。貯蔵鉄の指標である血清フェリチン値が基準値を超えている場合は、鉄を7㎎/日以下に制限する。普通の食事に含まれる鉄は約10㎎/日であるので、20㎎/日は鉄の過剰摂取の可能性がある。

正解(1)
by kanri-kokushi | 2013-02-20 16:59 | 第26回国家試験 | Comments(0)