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臨床栄養学

27-136 肝性脳症を繰り返す肝硬変患者の管理に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)エネルギー量は、20kcal/㎏標準体重/日とする。
(2)たんぱく質は、1.5ℊ/㎏標準体重/日とする。
(3)食物繊維を制限する。
(4)ラクツロースを投与する。
(5)芳香族アミノ酸を投与する。

(1)× 肝臓病患者の食事療法は、かつては高エネルギー、高たんぱく食とされていたが、それは食料事情が悪かった昭和初期の時代の名残で、現在の食料事情では高エネルギーにすると、肥満や脂肪肝となり、帰って肝機能に悪影響を与える。よって、肝臓病患者の摂取エネルギーは、「日本人の食事摂取基準」に準じるものとし、25~30㎉/㎏(標準体重)/日とする。

(2)× 肝性脳症を繰り返すということは、非代償期ということである。非代償期で、たんぱく不耐症(高アンモニア血症)がある場合は、0.5~0.7ℊ/㎏(標準体重)/日とし、窒素源の不足は分岐鎖アミノ酸製剤で補う。

(3)× 食物繊維は、便秘を予防し、腸内細菌によるアンモニア発生を予防するので、積極的に摂取する。

(4)○ ラクツロースは、ガラクトースとフルクトースからなる二糖類で、腸内の乳酸菌で分解され、乳酸と酢酸が産生される。その結果、腸内pHが低下し、アミノ酸分解菌の増殖を抑制することにより、アミノ酸の分解によるアンモニアの産生を抑制するので、ラクツロースを投与する。

(5)× 芳香族アミノ酸は、主に肝臓で代謝されるが、肝臓の代謝機能低下により、血中濃度が増加する。一方、分岐鎖アミノ酸は、主に骨格筋で代謝されるが、エネルギー消費増大に伴う異化の亢進により、血中濃度が低下する。また、高インスリン血症により筋肉への取り込みが増加する。その結果、脳内に移行するアミノ酸バランスが異常(アミノ酸インバランス)になり、脳内アミンの代謝障害を引き起こす。これが、肝性脳症の一因となる。よって、肝性脳症を予防するためには、分岐鎖アミノ酸を投与して、フィッシャー比を是正する必要がある。非代償期肝硬変患者に対する分岐鎖アミノ酸製剤投与の意義として、筋たんぱく質の合成促進と崩壊抑制、アミノ酸インバランスの是正による肝性脳症の改善、血清たんぱく質の増加、末梢組織でのアンモニア処理促進などがあげられる。

正解(4)
by kanri-kokushi | 2013-08-02 16:55 | 第27回国家試験 | Comments(0)