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臨床栄養学

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23-129 30歳事務職男性。1か月前より口渇、多尿があり、1週間前より全身倦怠感も出現した。近医を受診し、2型糖尿病と診断され入院となった。身長178㎝、体重77㎏(1か月前82㎏)、標準体重70㎏、血圧130/76mmHg、入院時血糖値520㎎/㎗、HbA1c13.5%、血清尿素窒素19㎎/㎗、血清クレアチニン0.8㎎/㎗、甲状腺ホルモン値正常、尿糖(+++)、尿たんぱく(-)、尿ケトン体(++)、運動習慣なし。この患者の病態と治療に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)体重減少の原因は、エネルギー消費量の増加である。
(2)エネルギー摂取量は、2,400kcal/日とする。
(3)たんぱく質摂取量は、30g/日とする。
(4)脂肪摂取量は、50g/日とする。
(5)運動療法を開始する。

(1)× 体重減少の原因は、インスリン不足による異化の亢進および尿糖排泄に伴う浸透圧利尿による脱水である。
 糖尿病では、インスリンの作用不足により血液中のグルコースを骨格筋細胞や脂肪細胞に取り込むことができない。そのため、血糖値の上昇にもかかわらず細胞内飢餓の状態になる。そのため、脂肪細胞に蓄積されている中性脂肪が分解されて脂肪酸が動員され、脂肪酸が主なエネルギー源として利用される。肝臓では脂肪酸のβ酸化亢進の結果、ケトン体の産生が増加する。血糖値が上昇し、尿糖排泄閾値(約170㎎/㎗)を超えると、尿中にグルコースを排泄するようになる。集合管での水の再吸収は、間質のNaによる浸透圧に依存しているので、集合管内の浸透圧が上昇すると水の再吸収が減少して、多尿となる。これが浸透圧利尿である。これにより脱水になるので、口渇が出現する。

(2)× エネルギー摂取量は、1,750kcal/日とする。
 糖尿病のエネルギー摂取量は、標準体重当たり30kcal/日が基本である。これに肥満の有無、身体活動レベルなどを考慮する。1か月前のBMIは、82÷1.78÷1.78=25.9なので肥満である。よって、エネルギー摂取量は25kcal/㎏標準体重/日を基準に考える。よって、まずは70×25=1750kcal/日くらいが無難なところである。後は、血糖値と体重減少の推移をみて調整する。2,400÷70=34.3kcal/㎏/日は、多すぎる。

(3)× たんぱく質摂取量は、70~84g/日とする。
 たんぱく質は、1.0~1.2ℊ/㎏標準体重/日とする。

(4)〇 脂肪摂取量は、50g/日とする。
 1,750kcalのうち、糖質を60%、たんぱく質を15%とすると、脂質は残りの25%である。1,750×0.25÷9=48.6ℊなので、50ℊ/日で問題ない。

(5)× 運動療法を禁止する。
 2型糖尿病は、相対的にインスリン作用が不足しているが、インスリン分泌は比較的保たれているので、治療の基本は食事療法と運動療法である。食事療法と運動療法を十分に実施しても、血糖値のコントロールが目標を達成できない場合に、薬物療法を行う。一方、インスリンが絶対的に不足する1型糖尿病では、インスリン療法が不可欠である。本症例は2型糖尿病であるが、ケトン体が陽性であることから、インスリンの欠乏状態はかなり重症であると考える。このような時期に運動療法を行うと、返って血糖値が上昇し、ケトアシドーシスを起こす危険性があるあるので、ケトン体が消失するまでは運動を禁止する。

正解(4)
by kanri-kokushi | 2013-10-14 13:54 | 第23回国家試験 | Comments(0)