2013年 10月 25日
臨床栄養学
23-133 腸疾患の食事療法に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)過敏性腸症候群では、高脂肪食とする。
(2)潰瘍性大腸炎では、高脂肪食とする。
(3)たんぱく質漏出性胃腸症では、低たんぱく質食とする。
(4)クローン病では、低エネルギー食とする。
(5)弛緩性便泌では、高食物繊維食とする。
(1)× 過敏性腸症候群では、過剰な脂質摂取を避ける。
過敏性腸症候群は、腸管の機能的な過敏性を特徴とし、腸管の運動、緊張、分泌が亢進する結果、大腸内容物を移動させるための蠕動運動、協調運動がうまくできなくなり、便秘や下痢をきたす疾患で、器質的な病変を同定できないものいう。原因不明で、内臓知覚過敏、心因性ストレス、自律神経失調症などが考えられている。消化・吸収障害はなく、栄養障害は起こらないので、特別な栄養療法は必要としない。食事療法では、水溶性食物繊維は、症状を改善させる作用があるので推奨される。過剰な脂質摂取は、胃排泄時間を延長させ、腹部膨満感を悪化させることがある。下痢型では、不溶性食物繊維の多い食品、香辛料、炭酸飲料、アルコール飲料、冷たいものなど刺激物を避ける。便秘型では、高食物繊維食とする。
(2)× 潰瘍性大腸炎では、低脂肪食とする。
潰瘍性大腸炎は、原因不明の大腸粘膜のびまん性非特異性炎症性疾患である。主として粘膜と粘膜下層を侵し、びらんや潰瘍を形成する。病変は、直腸に始まり、連続性に大腸粘膜を侵す。慢性に経過し、寛解と再燃を繰り返す。食事療法は、高エネルギー、高たんぱく質、高ビタミン・ミネラル、低脂肪、低残渣食とする。高脂肪食は、下痢を悪化させるので30~50ℊ程度に制限する。n-6系多価不飽和脂肪酸は、炎症を助長するので、n-3系多価不飽和脂肪酸や中鎖脂肪酸の利用が勧められる。
(3)× たんぱく質漏出性胃腸症では、高たんぱく質食とする。
たんぱく質漏出性胃腸症は、血漿中のアルブミンが、胃や腸管の粘膜から管腔内に漏出し、低アルブミン血症をきたす症候群である。たんぱく質が漏出するメカニズムとして、腸リンパ管の異常、毛細血管透過性亢進、消化管の潰瘍形成などがある。食事療法では、低栄養を防止するために高エネルギー、高たんぱく質食とする。長鎖脂肪酸はリンパ管から吸収され、リンパ管圧を上昇させるので、15~40ℊ/日の低脂肪食とする。中鎖脂肪酸は門脈経由で吸収されるので、利用が勧められる。
(4)× クローン病では、高エネルギー食とする。
原因不明の消化管の肉芽腫性炎症性疾患である。回腸末端に好発し、小腸、大腸に非連続的に広がる。腸管粘膜病変として、縦走潰瘍、敷石像、飛び越し病変などがある。病変は粘膜にとどまらず、筋層、漿膜に、さらに腸管周囲の脂肪組織まで及び、他臓器との瘻孔を形成する。慢性に経過し、寛解と再燃を繰り返しつつ、徐々に進行する。食事療法では、低栄養を防止するために高エネルギー食とする。牛肉、豚肉などのたんぱく質と脂質は再燃のリスクを高くするので控える。しかし、魚類のたんぱく質と脂質は問題が少ないので推奨される。食物繊維は、腸管に狭窄があると腸閉塞を起こす可能性があるので低繊維食とする。
(5)〇 弛緩性便泌では、高食物繊維食とする。
弛緩性便秘は、蠕動運動の低下により、便の移送が遅れることが原因である。高齢者に多い。太くて硬い便の排泄し、腹痛などの自覚症状は少ないことが特徴である。痙攣性便秘は、腸管の過緊張により便の移送が遅れることが原因である。若年者に多い。少量の兎糞様便の排泄し、腹痛、腹部膨満感、腹鳴など自覚症状が強いことが特徴である。直腸性便秘は、直腸での排便運動を習慣的に抑制することが原因である。若年女性に多い。弛緩性便秘では、腸管の動きを刺激するために高食物繊維食とする。
正解(5)