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臨床栄養学

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23-143 食物アレルギーに関する記述である。正しいのはどれか。
(1)乳幼児期には、起こらない。
(2)Ⅱ型アレルギーである。
(3)IgEが関与する。
(4)アナフィラキシーショックは、起こらない。
(5)低炭水化物食が有効である。

(1)× 乳幼児期に、起こることが多い。
 生後6ヵ月以内は、腸管免疫系が未熟なために、アレルゲンが腸管から体内へ侵入して感作されやすい。早期の離乳食により、外来たんぱく質、特に卵への暴露が感作の原因になる。年齢分布では、1歳未満がもっとも多く、年齢とともに軽快、消滅することが多い。ちなみに、新生児は生後4週間未満、乳児は満1歳未満、幼児は満1歳から小学校入学までのことである。

(2)× Ⅰ型およびⅣ型アレルギーである。
 食物アレルギーには、Ⅰ型アレルギーとⅣ型アレルギーが関与している。Ⅰ型アレルギーは、アナフィラキシー型反応(anaphylaxis)とも呼ばれ、IgEによる過敏症である。花粉症、アレルギー性鼻炎気管支喘息、蕁麻疹、ペニシリンショック、食物アレルギーなどが含まれる。Ⅳ型アレルギーは、ツベルクリン(tuberculin)型反応(遅延型過敏症)とも呼ばれ、Tリンパ球による細胞性免疫が関与している。食物アレルギー、ウイルス脳炎、ウイルス肝炎、接触性皮膚炎、1型糖尿病、膠原病などが含まれる。ちなみに、Ⅱ型アレルギーは、細胞障害型反応とも呼ばれ、細胞や組織に対する抗体産生に補体が関与して細胞障害を起こす。自己免疫性溶血性貧血、1型糖尿病(ウイルス感染、食餌抗原)などが含まれる。Ⅲ型アレルギーは、アルサス(Arthus)型反応とも呼ばれ、抗原-抗体複合体(免疫複合体)が組織傷害を引き起こす。血清病、糸球体腎炎、膠原病などが含まれる。

(3)〇 IgEが関与する。
 Ⅰ型アレルギーでは、アレルゲン(allergen)への暴露により、IgE抗体が産生される。産生されたIgEは、皮膚や粘膜に存在する肥満細胞(好塩基球由来)と結合する。すると、肥満細胞からヒスタミンなど化学伝達物質が放出される。化学伝達物質は、血管透過性を亢進させ、浮腫、発疹、血圧低下、気管支平滑筋の痙攣、呼吸困難などの症状を引き起こす。

(4)× アナフィラキシーショックを起こすことがある。
 PortierとRichetは、イソギンチャクの毒素の研究をしていた。毒素を犬に注射すると、1回目の注射では何も起きないが、2回目の注射直後、嘔吐、下痢、けいれんを起こして死亡した。この現象をアナフィラキシー(anaphylaxis=no protection)と名づけた。当初は、毒素は、1回目の注射で犬の抵抗力を奪い、2度目の注射で毒素の効果が現れたと考えた。しかし、無毒なたんぱく質でも、同様のアナフィラキシー症状が起こることがわかり、抗原特異的に起こることから、アナフィラキシーは免疫反応であることがわかった。
 ショック(shock)とは、血液が重要臓器に十分に供給されない状態(組織の循環不全)で、組織は栄養、酸素不足に陥り、放置すれば重篤な組織障害や死に至る病態である。アナフィラキシーが原因で起こるショックをアナフィラキシーショックという。

(5)× 除去食が有効である。
 食物アレルギーの食事療法は、原則としてアレルゲンとなる食品を食べないようにする除去食療法である。除去食療法のゴールは、「除去により症状を発現させないで普通の生活を送り、やがて耐性を獲得して除去を解除すること」にある。除去食は、誘発される症状の強さにあわせて除去の程度を加減する個別対応が原則である。完全除去食は、アレルギー症状が強く,生命が危険である場合に適応となる。除去した食品に対し、必ず他の食品(代替食品)で埋め合わせをする。半年~2年の除去食後、抗原性の低い加工食品を少量投与して、症状を見ながら徐々に解除する。

正解(3)
by kanri-kokushi | 2013-12-25 17:05 | 第23回国家試験 | Comments(0)