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解剖生理学

18-88.ホルモンの作用についての記述である。正しいのはどれか。
(1)オキシトシンは、乳腺の発育に必須である。
(2)カルシトニンは、骨吸収を促進する。
(3)アルドステロンは、尿細管でのナトリウム再吸収を促進する。
(4)インスリンは、筋肉でのグルコース取込みを抑制する。
(5)グルカゴンは、肝グリコーゲンの分解を抑制する。

(1)オキシトシンは下垂体後葉から分泌されるホルモンである。オキシトシンの作用については2つ覚えておく必要がある。しかし、2つともその作用は平滑筋の収縮だ。まず1つは、分娩するときで、子宮筋層の平滑筋に作用して収縮させ、分娩を促進する。もう1つは乳児が乳首を吸引することが刺激になって、乳管周囲の平滑筋を収縮させて、乳汁を排出させる。これを射乳反射という。乳腺の発育に必須のホルモンはプロラクチン、エストロゲン、プロゲステロンである。

(2)カルシトニンは甲状腺の濾胞傍細胞から分泌される。カルシトニンは血清Ca濃度の上昇が刺激となって分泌が促進され、骨へのCa沈着を促進することにより血清Ca濃度を低下させる。骨吸収とは骨の沈着しているCaを溶解して血清Ca濃度を上げることで、骨に含まれるCaは減少する。骨吸収を促進するホルモンは上皮小体から分泌されるパラトルモン(PTH)である。

(3)アルドステロンは副腎皮質から分泌される。アルドステロン分泌の調節はレニン・アンギテンシン系によって調節されている。レニンは腎臓の血流減少が刺激になって分泌される。腎臓の血流減少は体液量の減少を意味している。すなわち、体液量の減少は、腎臓の血流減少を介してレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系を亢進させ、Naの再吸収を促進して体内のNa量を増加させることにより体液量を増加させるわけだ。問題文の尿細管についてだが、少し古い教科書ではアルドステロンの作用部位は遠位尿細管という記述があるが、最近の教科書では皮質集合管という記述が多い。まあ、尿細管を広い意味で集合管まで含めるということでよしとしよう。

(4)御存知インスリンは膵臓ランゲルハンス島B細胞から分泌されるホルモンだ。インスリンが筋肉細胞の細胞膜上にあるインスリン受容体に結合すると細胞内に一連の反応が起こる。インスリンの作用は多岐にわたるが、重要な作用のひとつに、筋肉細胞内の小胞体に収めていたグルコーストランスポーターを細胞膜上に移動させることがある。この結果、細胞外のグルコースは細胞内に取り込まれて血糖値が低下する。インスリンが筋肉細胞のドアをノックするとドアが開いて細胞外のグルコースが細胞内に流れ込むと考えればよい。

(5)御存知グルカゴンは膵臓ランゲルハンス島A細胞から分泌されるホルモンだ。グルカゴンが肝細胞の細胞膜上にあるグルカゴン受容体に結合すると細胞内に一連の反応が起こる。まず、細胞内cAMP濃度が上昇する。その結果、解糖は抑制され、糖新生が促進される。また、グリコーゲン分解が促進される。こうして肝細胞内でグルコースが作られ、これが血液中に放出されて血糖値が上昇する。

正解(3)
by kanri-kokushi | 2005-12-16 11:32 | 第18回国家試験 | Comments(0)