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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

2821 ヒトの細胞の構造と機能に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
1)細胞膜は、リン脂質の二重層からなる。

2)赤血球には、ミトコンドリアが存在する。
3)リソソームでは、たんぱく質の合成が行われる。
4)滑面小胞体では、グリコーゲン合成が行われる。
5iPS細胞(人工多能性幹細胞)は、受精卵を使用する。

1)○ 細胞膜は、リン脂質の二重層からなる。
 トリグリセリド(中性脂肪)は、グリセロールの3つの水酸基(OH)に3本の脂肪酸のカルボキシル基(COOH)がエステル結合(COO)したものである。このうち脂肪酸の1つがリン酸に置き換わったものがリン脂質である。そのリン酸にセリンが結合するとホスファチジルセリン、イノシトールが結合するとホスファチジルイノシトール、コリンが結合するとホスファチジルコリンになる。リン脂質は、リン酸による親水性の部分と、2本の脂肪酸による疎水性の部分からなる。脂肪酸2本というところに意味があり、親水性の部分の幅と疎水性の部分の幅が同じくらいなので平面が形成されるのである。そして、水溶液中では疎水性の脂肪酸が向き合うことにより脂質二重層を形成するのである。

2)× 赤血球には、ミトコンドリアは存在しない。
 赤血球は、骨髄で作られる。赤血球のもとになる細胞を赤芽球という。赤芽球は、腎臓から分泌されるエリスロポイエチンの作用により増殖、分化する。赤芽球が成熟すると核が放出されて網赤血球になる。その後ミトコンドリア、小胞体、リボソームなど細胞小器官が放出されて、赤血球内にはヘモグロビンと解糖系酵素や炭酸脱水素酵素などの酵素だけになる。よって、赤血球のATPは、解糖系のみによって産生される。新しいたんぱく質を合成できない赤血球の寿命は、約120日で、老化した赤血球は脾臓で破壊される。

3)× リソソームでは、細胞内外の不要なたんぱく質、核酸、多糖類、脂質などの加水分解が行われる。
 リソソームは、細胞内小器官の1つである。リソソーム(lysosome)のリソ(lyso-)は、「溶解(lysis)」から派生した接頭語である。リソソームには、40種類以上の加水分解酵素が含まれている。よって、リソソームは、細胞内の不要な物質を加水分解する。また、細胞外の物質を取り込んでできた食胞(phagosome)と融合して、異物の加水分解も行う。

4)× 滑面小胞体では、トリグリセリド、リン脂質、コレステロール、ステロイドホルモンなどの合成を行う。
 滑面小胞体は、脂質合成の他に、筋小胞体としてカルシウムイオンの汲み上げや、解毒に関係した酵素を含んでいる。これらの機能を、すべての滑面小胞体が持っているわけではなく、それぞれの臓器での細胞の役割に応じて、必要な機能を果たしている。糖質は水溶性なので、グリコーゲン合成は細胞質で行われる。トリグリセリドの材料である脂肪酸は、脂質であるが細胞質で合成されが、脂質を分解するβ酸化はミトコンドリアで行われる。

5)× iPS細胞は、体細胞を使用する。
 iPS細胞(inducedpluripotent stem cells)は、体細胞に山中ファクターと呼ばれる4つの遺伝子を導入して作成する。いったん分化した体細胞は、多能性幹細胞(pluripotent stem cells)に戻ることはないという定説を覆したところがノーベル賞に値する研究ということである。受精卵を使用して作成する多能性幹細胞を、ES細胞(embryonic stem cells)という。ES細胞は、受精卵を使用するので、倫理的問題が付きまとう。その点を回避できるということでもiPS細胞に期待が集まっている。STAP細胞(stimulus-triggered acquisition of pluripotency cells)は存在せず、ES細胞が混入していたことが昨年の年末に報道されていた。

正解(1)


by kanri-kokushi | 2015-01-08 17:27 | 第28回国家試験 | Comments(0)