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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

2828 情報伝達に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
1)交感神経終末の伝達物質は、アセチルコリンである。

2)肝細胞のグルカゴン受容体刺激は、グリコーゲン合成を促進する。
3)アドレナリン受容体は、核内受容体である。
4cAMP(サイクリックAMP)は、セカンドメッセンジャーである。
5)インスリンは、肝細胞のグルコース輸送体(GLUT2)に作用する。

1)× 交感神経終末の伝達物質は、ノルアドレナリンである。
 自律神経の神経線維は、たった2つのニューロンで構成されている。2つのニューロンの間では、1つのシナプスが形成されている。シナプスを形成している部位を神経節という。中枢神経内にある細胞体から伸びる軸索を節前線維という。神経節にある細胞体から伸びる軸索を節後線維という。神経節のシナプスでの伝達物質は、交感神経も副交感神経もアセチルコリンである。節後線維の末端は、それぞれの効果組織の細胞とシナプスを形成している。そこでの伝達物質は、交感神経がノルアドレナリン、副交感神経がアセチルコリンである。

2)× 肝細胞のグルカゴン受容体刺激は、グリコーゲン分解を促進する。
 グルカゴンは、血糖値低下が刺激となって、膵ランゲルハンス島A細胞から分泌される。グルカゴンが肝細胞のグルカゴン受容体に結合すると、Gたんぱく質を介してアデニルシクラーゼを活性化する。アデニルシクラーゼによって産生されるcAMPは、cAMP依存性プロテインキナーゼを活性化する。その後何段階かあって、最終的に、グリコーゲン合成酵素が不活性化し、ホスホリラーゼが活性化してグリコーゲン分解が促進する。インスリンは、グリコーゲン合成酵素を活性化し、ホスホリラーゼを不活性化するので、グリコーゲン合成を促進する。

3)× アドレナリン受容体は、細胞膜上にある受容体である。
 ホルモンには、インスリンやグルカゴンなどのペプチドホルモン、アドレナリンなどのアミン型ホルモン、性ホルモンなどのステロイドホルモンがある。ペプチドホルモンは、水溶性である。ステロイドホルモンは、脂溶性である。アミン型ホルモンのうち、アドレナリンは水溶性だが、甲状腺ホルモンは脂溶性である。水溶性ホルモンは、細胞膜を通過できないので、受容体は細胞膜を貫通して存在し、ホルモンは、受容体の細胞外に出ている部分に結合する。脂溶性ホルモンは、細胞膜を通過できるので、受容体は細胞質や核内にある。

4)○ cAMP(サイクリックAMP)は、セカンドメッセンジャーである。
 ホルモンの役割は、ある情報をある細胞に伝える情報伝達(メッセンジャー)ことである。グルカゴンには血糖値を上げる作用があるが、グルカゴン自体は血糖値が低いという情報を、血糖値を上昇させる器官に伝達しているにすぎない。グルカゴンの情報を受け取った受容体は、細胞内でグルコースを作り出す酵素を活性化しなければならない。受容体から、これら最終的に作用を表すための仕事をする酵素に情報を伝える分子をセカンドメッセンジャーという。グルカゴンなどのホルモンは、ファーストメッセンジャーである。cAMPは、グルカゴンが受容体に結合すると細胞内で産生され、グリコーゲン分解や糖新生を行う酵素を活性化するので、セカンドメッセンジャーである。

5)× インスリンは、筋肉や脂肪細胞のグルコース輸送体(GLUT4)に作用する。
 グルコースは、細胞膜を自由に通過できない。グルコースは、グルコース輸送体(GLUT, glucose transporter)によって細胞膜を通過する。GLUTは、「グルット」と発音する。GLUTには、赤血球に存在するGLUT1、肝臓や膵ランゲルハンス島B細胞に存在するGLUT2、神経細胞に存在するGLUT3、筋肉や脂肪組織に存在するGLUT4などがある。このうち、GLUT1GLUT2GLUT3は、常に細胞膜上にあり、インスリンの調節は受けない。GLUT4は、インスリンの刺激がないときは、細胞内の小胞体に格納しているが、インスリンの刺激を受けると、細胞膜上に出現し、グルコースを細胞内に取り入れる。

正解(4


by kanri-kokushi | 2015-01-18 13:43 | 第28回国家試験 | Comments(0)