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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

28-38 循環器系の構造と機能に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)心拍出量は、成人で安静時に約5ℓ/分である。
(2)肺動脈を流れる血液は、動脈血である。
(3)左心室の壁厚は、右心室の壁厚よりも薄い。
(4)副交感神経の興奮により、心拍数は増加する。
(5)血圧が上昇すると、レニンの分泌が増加する。

(1)〇 心拍出量は、成人で安静時に約5ℓ/分である。
 1回の拍動により左心室から拍出される血液量を、1回心拍出量という。成人男子では、約70㎖である。左心室が拡張したときの体積を、一辺約4㎝の立方体を想像してみよう。一分間で拍出される血液量を毎分心拍出量といい、1回心拍出量×心拍数で求めることができる。心拍数を70回/分とすると、毎分心拍出量は、70㎖×70回/分=4900㎖/分で、約5ℓ/分になる。ちなみに、心拍数が増加すると、心室に十分な血液が充満する前に収縮が始まるので、1回心拍出量は減少する。

(2)× 肺動脈を流れる血液は、静脈血である。
 まずは定義から。心臓から出る血管を動脈という。心臓に返ってくる血管を静脈という。よって、心臓から肺に行く血管は、肺動脈である。肺から心臓に返ってくる血管は、肺静脈である。次に、酸素を多く含む血液は、動脈血である。酸素を組織に放出した後の血液は静脈血である。肺動脈は、全身から帰ってきた静脈血を肺に送る。肺で酸素と結合した動脈血は、肺静脈によって心臓に帰る。

(3)× 左心室の壁厚は、右心室の壁厚よりも厚い。
 血液は、動脈を静脈の血圧の差によって、圧力の高いところから低いところへ流れる。肺循環は、心臓から同じ高さにあり、肺動脈から肺静脈への距離も短いことから、肺動脈圧はそれほど高くなくてもよい。一方、体循環は、頭のてっぺんから足の先まで全身に血液を送る必要があることから、大動脈圧はかなり高くなる。実際の肺動脈圧は、大動脈圧の1/5である。血圧が高くなれば、それだけ大動脈の壁厚も左心室の壁厚も厚くなるのは当然である。

(4)× 副交感神経の興奮により、心拍数は減少する。
 正常な心臓では、洞房結節が心拍のペースメーカーになっている。洞房結節では、周期的な活動電位が発生している。活動電位は発生する前の電位を前電位といい、前電位の勾配と深さが心拍数を決める要因になっている。交感神経は、洞房結節、房室結節、脚、プルキンエ線維、心筋に分布している。交感神経は、前電位の勾配を急峻にすることにより、心拍数を増加させる。さらに、交感神経は、刺激伝導速度を速くし、心筋の収縮力を強くする。一方、副交感神経(迷走神経)は、洞房結節と房室結節だけに分布している。副交感神経は、前電位の勾配を緩やかにし、さらに過分極にすることにより心拍数を減少させる。

(5)× 血圧が上昇すると、レニンの分泌が減少する。
 レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系をまとめておこう。①血圧が低下すると、腎臓の血流が減少する。②腎臓の血流が減少すると、傍糸球体細胞(傍糸球体装置)からレニンが分泌される。③レニンは、アンギオテンシノーゲンをアンギオテンシンⅠに変換する。アンギオテンシノーゲンは453個アミノ酸からなるたんぱく質で、主に肝臓で合成される。レニンは、アンギオテンシノーゲンのN端を切り離して、10個のアミン酸からなるアンギオテンシノーゲンⅠを生成する。アンギオテンシンⅠには生理活性はない。④アンギオテンシン変換酵素(ACE、angiotensin converting enzyme)は、アンギオテンシンⅠをアンギオテンシンⅡに変換する。アンギオテンシン変換酵素は、アンギオテンシンⅠのC端の2つのアミノ酸を切り離して、8個のアミノ酸からなるアンギオテンシンⅡを生成する。⑤アンギオテンシンⅡは、血管を収縮させて、血圧を上昇させる。⑥アンギオテンシンⅡは、副腎皮質に働いて、アルドステロンを分泌させる。⑦アルドステロンは、腎臓(集合管)に働いて、Naの再吸収を促進する。⑧Naの再吸収が促進すると、体液量が増加して、血圧が上昇する。

正解(1)
by kanri-kokushi | 2015-01-23 16:45 | 第28回国家試験 | Comments(0)