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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

28-50 感染症とその病原体の組合せである。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)急性糸球体腎炎 - 細菌
(2)麻疹 - リケッチア
(3)ニューモシスチス肺炎 - ウイルス
(4)手足口病 - マイコプラズマ
(5)発疹チフス - クラミジア

(1)〇 急性糸球体腎炎 - 細菌
 急性糸球体腎炎では、血尿、たんぱく尿、高血圧、糸球体濾過値の減少、浮腫が急激に出現する。80~90%は、上気道のA群溶血連鎖球菌(streptococcus)感染が原因である。感染1~2週間後、免疫複合体が糸球体基底膜に沈着し、糸球体に炎症を起こす。溶連菌感染により、血清ASO(抗ストレプトリジンO、anti-streptolysin O)値が上昇する。ストレプトリジンOは、溶連菌が分泌する菌体外毒素である。

(2)× 麻疹 - ウイルス
 麻疹は、通称「はしか」と呼ばれ、空気感染(飛沫感染)により伝染するウイルス疾患である。

(3)× ニューモシスチス肺炎 - 真菌
 カリニ肺炎はニューモシスチス・カリニ感染症である。ニューモシスチス・カリニは細菌ではない。教科書によっては原虫に分類しているものや、真菌に分類しているものがあるけど、「標準微生物学」(医学書院)によると、現在では真菌の1種である説が有力だそうだ。
 通常の状態では無害な弱毒菌であるが、宿主の感染防御能の低下(エイズや免疫抑制剤の使用など)により日和見感染を起こす微生物である。

(4)× 手足口病 - ウイルス
 手足口病はエンテロウイルスの1種であるコクサッキーA群ウイルス16型あるいはエンテロウイルス71型の感染が原因である。小児において発熱、咽頭痛、口腔粘膜と手足の皮膚に小さな水泡が出現する。1週間程度で自然に治る。ウイルス感染が原因で手、足、口に水泡ができる病気と覚えておこう。マイコプラズマは自己増殖能を持つ細菌の中でもっとも小さく、細胞壁を持たない。よってペニシリンなど細胞壁合成を阻害する抗生物質は無効である。マイコプラズマ肺炎を起こす。

(5)× 発疹チフス - リケッチア
 リケッチアとクラミジアはどちらも細菌に分類されるけど、他の細菌と違うところは動物細胞の中でしか増殖できないウイルスのような性質を持った細菌であるというところだ。リケッチアが人への感染するためには節足動物の媒介を必要とするけど、クラミジアはそれを必要としない。
 リケッチア感染症には発疹チフス、ツツガムシ病、Q熱などがある。クラミジア感染症にはオウム病、クラミジア肺炎、トラコーマなどがある。最近は性感染症として非淋菌性尿道炎、子宮頚管炎が注目されている。トラコーマとはクラミジア感染による流行性角結膜炎のことである。
 クラミジアはグラム陰性菌に似た外膜を持つが、ペプチドグリカンの層からなる細胞壁を持たないので、ペニシリン系やセフェム系抗生物質は無効である。治療にはテトラサイクリン系またはマクロライド系の抗生物質が第1選択薬である。

正解(1)
by kanri-kokushi | 2015-02-02 18:11 | 第28回国家試験 | Comments(0)