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病理学

18-94.出血素因についての記述である。正しいのはどれか。
(1)ビタミンD欠乏症では、肝臓でのプロトロンビン合成が抑制される。
(2)血友病は血小板の先天的異常で起こる。
(3)壊血病では、プラスミン形成が障害される。
(4)コラーゲン合成はアスピリンにより抑制される。
(5)播種性血管内凝固症候群(DIC)では、血小板・凝固因子の消費が亢進する。

血管の壁が破れて出血したときに、それを止血するのは血小板凝固因子の役割である。血管、血小板、凝固因子のいずれかに異常があって、止血しにくい状況あるいは出血しやすい状況を「出血素因」あるいは「出血傾向」という。出血が起こったとき、まず働くのが血小板だ。とりあえず開いた穴をふさぐ役割がある。血小板が凝集してできる血栓を一次止血血栓という。次に血漿中の凝固因子が活性化されて、もろくて壊れやすい血小板血栓を丈夫な血栓にする。こうしてできる血栓を二次止血血栓という。

(1)凝固因子は全部で12種類(第Ⅰ~ⅩⅢ、Ⅵは欠番)あるが、そのほとんどが肝臓で合成される。肝臓で合成される凝固因子のうち第Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子ビタミンK依存性に合成される。プロトロンビンは第Ⅱ因子だ。ビタミンK欠乏症では、これらの凝固因子の合成が障害されるので、血液は凝固しにくくなる。心筋梗塞や脳梗塞など血栓ができやすい人では、血栓ができるのを予防するためにワルファリンという薬を服用するけど、ワルファリンはビタミンKの作用を邪魔して、血栓ができにくいようにしているんだ。ついでに、納豆はビタミンKを多く含むので、ワルファリンを服用している患者さんが納豆を過剰に摂取するとワルファリンの作用が減弱する可能性がある。

(2)血友病は先天的な第Ⅷ因子(血友病A、古典的血友病)または第Ⅸ因子(血友病B、クリスマス病)の欠損によって起こる病気だ。治療には血液から作る凝固因子を投与することだが、材料の血液がHIVによって汚染されていたのが、薬害エイズだ。

(3)壊血病ビタミンC欠乏症だ。コラーゲンはグリシン、プロリン、ヒドロキシプロリンを主成分とする3本鎖のらせん状構造をしたタンパク質だが、プロリンからヒドロキシプロリンを作る酵素にはビタミンCを必要とする。ビタミンCが不足するとヒドロキシプロリンの生成が障害されて、正常なコラーゲン線維ができなくなる。このため、結合組織の生成が障害されて血管の壁がもろくなって、出血しやすくなって、歯茎から出血するんだ。プラスミンはフィブリンを分解して血栓を溶かす。「歯肉から出血するのはプラスミンだった」という歯磨きのコマーシャルがあるけど、同じ歯茎に出血だけど、これを壊血病とはいわない。

(4)アスピリンプロスタグランジン合成を抑制する薬だ。血栓形成に関連したプロスタグランジンには、血小板で産生されて血栓形成を促進するトロンボキサンと、血管内皮細胞で産生されて血栓形成を抑制するプロスタサイクリンがある。アスピリンは両方の合成を抑制するが、トロンボキサンの抑制がより強いために、血栓形成抑制薬として、心筋梗塞や脳梗塞の予防薬として使用されている。

(5)DICとは病名のごとく、全身の血管内で血液が凝固する病気だ。血液が凝固するということは血血液中の血小板と凝固因子が消費されるということだ。その結果、血液中の血小板と凝固因子が減少して、「出血傾向」を引き起こすんだ。

正解(5)
by kanri-kokushi | 2005-12-26 15:57 | 第18回国家試験 | Comments(0)