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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

29-27 糖質・脂質の代謝に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)肝臓のグリコーゲンは、血糖値の維持に利用される。
(2)糖新生は、筋肉で行われる。
(3)脂肪細胞中のトリアシルグリセロールの分解は、インスリンにより促進される。
(4)脂肪酸合成は、リボソームで行われる。
(5)β酸化は、細胞質ゾルで行われる。

(1)○ 肝臓のグリコーゲンは、血糖値の維持に利用される。
 血糖値が上昇すると、血液中のグルコースは肝臓に取り込まれ、グリコーゲンとして肝臓内に貯蔵される。この過程は、インスリンが肝臓に作用することによって促進される。血糖値が低下するとグリコーゲンを分解して、グルコースを血液中に放出する。この過程は、グルカゴンが肝臓に作用することによって促進される。肝臓に貯蔵さえるグリコーゲンは、食物として糖質を供給しなければ1~2日で枯渇する。その後は、糖質の供給が不足する状態が続くと、肝臓での糖新生によって血糖値を維持する。糖新生の材料は、筋肉たんぱく質を分解して得られる糖原性アミノ酸である。だから、極端な糖質制限食は、代謝の視点からは危険な食事療法である。

(2)× 糖新生は、肝臓と腎臓で行われる。
 糖原性アミノ酸を材料にして、グルコースを合成する糖新生ができるのは、肝臓と腎臓だけである。このうち血糖値の維持に重要な役割を果たしているのは、グルコースの供給量から見て肝臓が重要である。

(3)× 脂肪細胞中のトリアシルグリセロールの分解は、アドレナリンにより促進される。
 血液中のトリアシルグリセロール(中性脂肪、トリグリセリドともいう)を分解して、脂肪細胞に脂肪酸を供給し、脂肪細胞内でのトリアシルグリセロールの合成を促進するのは、インスリンである。アドレナリンは、脂肪細胞のβ3アドレナリン受容体に結合するとホルモン感受性リパーゼを活性化して、トリアシルグリセロールの分解を促進する。アドレナリンに反応しにくいβ3アドレナリン受容体の遺伝子多型は、肥満遺伝子の一つとして知られている。

(4)× 脂肪酸合成は、細胞質で行われる。
 主な代謝経路が存在する場所をまとめておこう。細胞質では、解糖、ペントースリン酸回路、グリコーゲンの合成と分解、脂肪酸の合成が行われる。ミトコンドリアでは、脂肪酸のβ酸化、クエン酸回路、電子伝達系が行われる。滑面小胞体では、トリグリセリド、リン脂質、コレステロール、ステロイドホルモンの合成が行われる。

(5)× β酸化は、ミトコンドリアで行われる。

正解(1)
by kanri-kokushi | 2015-08-07 16:59 | 第29回国家試験 | Comments(0)