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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

29-35 代謝疾患に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)高尿酸血症は、ピリミジンヌクレオチドの代謝異常症である。
(2)ウイルソン病は、銅の代謝異常症である。
(3)糖原病I型では、高血糖がみられる。
(4)ホモシスチン尿症では、血中チロシン濃度が増加する。
(5)メープルシロップ尿症は、芳香族アミノ酸の代謝異常症である。

(1)× 高尿酸血症は、プリンヌクレオチドの代謝異常症である。
 ペントースに塩基が結合したものをヌクレオシドという。ヌクレオシドのペントースにリン酸が結合したものをおヌクレオチドという。ヌクレオチドを構成する塩基には5種類ある。このうちアデニンとグアニンの2つはプリン塩基であり、シトシン、チミン、ウラシルの3つはピリミジン塩基である。プリン塩基が代謝されるとキサンチンを経て尿酸になる。プリン塩基の代謝異常により高尿酸血症が出現する。

(2)○ ウイルソン病は、銅の代謝異常症である。
 ウイルソン病は、細胞内銅輸送たんぱく質の異常により、組織に銅が沈着する疾患である。3大症状は、肝硬変、錐体外路症状、角膜のカイザー‐フライシャー輪である。セルロプラスミン(銅輸送たんぱく質)の合成障害により、血中セルロプラスミン値は低値になる。治療には、銅キレート薬を使用する。

(3)× 糖原病I型では、低血糖がみられる。
 糖原病Ⅰ型(von Gierke病)は、糖原尿の中でもっとも多いタイプである。原因は、グルコース‐6‐ホスファターゼの欠損である。肝臓と腎臓にグリコーゲンが蓄積し、低血糖、高乳酸血症が出現する。治療は、低血糖予防のため、高糖質の頻回食とする。ガラクトース(乳糖に含まれる)とフルクトース(ショ糖に含まれる)はグルコースとして利用できず、乳酸産生を増加させるので控える。

(4)× ホモシスチン尿症では、血中ホモシスチン濃度が上昇する。
 ホモシスチン尿症の原因は、シスタチオニン合成酵素の欠損である。常染色体劣性遺伝する。シスタチオニン合成酵素は、ホモシステインとセリンからシスタチオニンを生成する。ホモシステインの蓄積により血中ホモシスチン濃度が上昇し、ホモシスチンの尿中排泄も増加する。また、メチオニン合成も増加するので、血中メチオニン濃度が上昇する。一方、シスタチオニン不足により血中システイン濃度は低下する。症状として水晶体脱臼、骨粗鬆症、長身、くも状指、精神運動発達遅延、痙攣、血栓塞栓症がある。治療は、低メチオニン・高シスチン食とする。ビタミンB6反応型ではビタミンB6大量療法を行う。

(5)× メープルシロップ尿症は、分岐鎖アミノ酸の代謝異常症である。
 メープルシロップ尿症の原因は、分岐鎖ケト酸脱水素酵素複合体の欠損である。常染色体劣性遺伝する。分岐鎖ケト酸の蓄積により、尿中排泄が増加すると楓(メープル)シロップ臭がする。生後1~2週から哺乳困難、痙攣、後弓反張、神経障害、低血糖、ケトアシドーシスが出現する。分岐鎖ケト酸の蓄積を抑制するために、ロイシン、イソロイシン、バリン制限食を投与する。

正解(2)
by kanri-kokushi | 2015-11-18 17:02 | 第29回国家試験 | Comments(0)