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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

30-30 消化器がんに関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)食道がんには、腺がんが多い。
(2)ダンピング症候群は、食道がん術後の合併症である。
(3)早期胃がんでは、ボールマン(Borrmann)分類が用いられる。
(4)大腸がん検診には、便潜血反応が用いられる。
(5)肝細胞がんの治療では、外科手術は禁忌である。

(1)× 食道がんには、扁平上皮癌が多い。
 食道がんは、食道上皮から発生する。扁平上皮癌が95%を占める。病因が、喫煙と飲酒が強く関連する。その他、熱いものや辛いものなどが関連する。症状としては、嚥下困難、胸痛、嗄声などがある。診断は、食道X線造影、内視鏡、生検で行う。治療は、外科的切除、放射線療法、内視鏡的粘膜切除(早期癌)、化学療法などがある。

(2)× ダンピング症候群は、胃全摘手術後の合併症である。
 胃全摘手術により食道と空腸を吻合すると、食物が直接空腸に流入するようになる。食物による高浸透圧の刺激と急激な拡張による刺激により、食後10~30分後に腹部症状:腹痛、悪心、嘔吐、腹鳴、下痢など神経内分泌反応による症状が出現することを早期ダンピング症候群という。動悸、発汗、冷や汗、めまい、呼吸困難、失神などの全身症状も出現する。その後、糖質の急速な吸収がインスリン過剰分泌を引き起こし、反応性低血糖が起こる。これを晩期(後期)ダンピング症候群といい、食後90分~3時間後に脱力感、めまい、冷や汗、動悸、手の震え、意識障害など低血糖症状が出現し、30~40分持続する。ダンピング(dumping)は、英語のdump(荷物をドサッと降ろす)に由来している。

(3)× 進行胃がんでは、ボールマン(Borrmann)分類が用いられる。
 粘膜から発生するがん組織が、粘膜層から粘膜下層までにとどまっている場合を早期胃がんという。早期胃がんは、形状により、Ⅰ型(隆起型)、Ⅱ型a(表面隆起型)、Ⅱ型b(表面平坦型)、Ⅱ型c(表面陥凹型、Ⅲ型(陥凹型)に分類される。がん組織が粘膜下層を越えて筋層まで達している場合を進行胃がんという。ボールマン分類も、形状により、1型(限局隆起型)、2型(限局潰瘍型)、3型(浸潤潰瘍型)、4型(びまん浸潤型、スキルスともいう)に分類される。

(4)〇 大腸がん検診には、便潜血反応が用いられる。
 早期の大腸がんの場合は、少量の出血以外に自覚症状はないので、大腸内視鏡検査や大腸透視検査を行うためのスクリーニング検査として、糞便中の微量の血液を検出できる便潜血検査は有用な検査である。検査方法には、化学的検査法と免疫学的検査法があるが、健康診断などでは食事の前処置が必要ないことから免疫学的検査法が多用されている。

(5)× 肝細胞がんの治療では、外科手術も行われる。
 医療分野で「禁忌」というと、その病態を悪化させる可能性があるのでやってはいけない治療法である、という意味である。肝臓がんの治療には、薬物療法、放射線療法に加えて手術療法も適応になる。ちなみに、医療分野で「適応」というと、その病態を改善するのにふさわしい治療法である、という意味である。

正解(4)
by kanri-kokushi | 2016-07-07 10:46 | 第30回国家試験 | Comments(0)