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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

3123 糖質の代謝に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。

1)グリコーゲンホスホリラーゼは、グリコーゲンを加水分解する。

2)肝細胞内cAMP(サイクリックAMP)濃度の上昇は、グリコーゲン合成を促進する。

3)グルコース-6-ホスファターゼは、筋肉に存在する。

4)ぺントースリン酸回路は、NADHを生成する。

5)糖新生は、インスリンによって抑制される。


1)× グリコーゲンホスホリラーゼは、グリコーゲンを加リン酸分解する。

 グリコーゲンは、単糖類であるグルコースがグリコシド結合で重合した多糖類である。「ホスホ(phospho)」はリン酸のことである。グリコーゲンホスホリラーゼは、グリコーゲンの末端のグリコシド結合にリン酸を加えてグルコース-1-リン酸を生成する「加リン酸分解」を触媒する酵素である。

 グリコーゲンの合成は、UDP-グルコースのグルコース部分をグリコーゲンの末端にグリコシド結合でつなぐグリコーゲン合成酵素によって触媒される。


2)× 肝細胞内cAMP(サイクリックAMP)濃度の上昇は、グリコーゲン分解を促進する。

 cAMPは、グルカゴンが肝細胞の細胞膜に存在するグルカゴン受容体に結合することをきっかけに生成されるセカンドメッセンジャーである。cAMPは、cAMP依存性プロテインキナーゼ(PKA)を活性化する。PKAは、ホスホリラーゼbキナーゼをリン酸化して活性化する。活性化したホスホリラーゼbキナーゼは、ホスホリラーゼbをリン酸化して活性型のホスホリラーゼaにする。ホスホリラーゼaは、グリコーゲンを加リン酸分解する。一方、PKAは、グリコーゲン合成酵素をリン酸化して不活性化する。

 このように、ドミノ倒しのように次々にたんぱく質をリン酸化することによりたんぱく質の機能を調節することをリン酸カスケードという。リン酸化カスケードは、ホルモンによるわずかな刺激を細胞全体の大きな効果に増幅する作用がある。


3)× グルコース-6-ホスファターゼは、肝臓と腎臓に存在する。

 グルコース-6-ホスファターゼは、グルコース-6-リン酸を加水分解してグルコースとリン酸を生成する酵素である。糖新生またはグリコーゲンの分解で生成したグルコース-6-リン酸は、細胞膜を通過することができないが、グルコース-6-ホスファターゼの作用で生成したグルコースは細胞膜を通過することができる。よって、糖新生またはグリコーゲンの分解で生成したグルコースを血液中に供給し、血糖値を上昇させるためには、グルコース-6-ホスファターゼが不可欠である。グルコース-6-ホスファターゼは肝臓と腎臓にあって、筋肉にはない。よって、筋肉に蓄積されたグリコーゲンは、その細胞内でしか利用できない。


4× ぺントースリン酸回路は、NADPHを生成する。

 ペントース・リン酸回路は、細胞質に存在する解糖系の側路であり、解糖系の代謝中間体であるグルコース-6-リン酸から枝分かれして、フルコース-6-リン酸とグリセルアルデヒド-3-リン酸になって、再び解糖系に戻ってくる。ペントース・リン酸回路の役割は、脂質合成に必要なNADPHの産生と核酸合成に必要なリボース‐5‐リン酸の産生、の2つである。リボース‐5‐リン酸は、リン酸が2つ結合して5-ホスホリボシル二リン酸(PRPP)ができる。PRPPは、ヌクレオチド合成の材料になる。

 NADPHnicotinamide adenine dinucleotidephosphateの還元型)は、NADHnicotinamideadenine dinucleotideの還元型)にリン酸がくっついたものである。いずれも酸化還元反応に関わる補酵素であるが、NADPHが脂肪酸合成に関わるのに対し、NADHは解糖系とクエン酸回路で放出された電子を電子伝達系に運ぶ役割を果たしている。


5)○ 糖新生は、インスリンによって抑制される。

 インスリンは、細胞内のフルクトース-2,6-二リン酸濃度を上昇させる。フルクトース-2,6-二リン酸は、糖新生の律速酵素であるフルクトースビスホスファターゼ活性をアロステリック効果により抑制する。その結果、糖新生は抑制される。


正解(5


by kanri-kokushi | 2017-08-08 10:20 | 第31回国家試験 | Comments(0)