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臨床栄養学

18-18.黄疸に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)閉塞性黄疸では主として血清間接型ビリルビンが増加する。
(2)溶血性黄疸では主として血清直接型ビリルビンが増加する。
(3)新生児黄疸では主として血清直接型ビリルビンが増加する。
(4)肝機能が正常であれば、血清ビリルビンはすべて直接型である。
(5)血清ビリルビン値が2.0mg/dl以上になると黄疸が認められる。

黄疸の鑑別は、学生には理解しにくいようだ。それで丸覚えしようとするけど、結局忘れてしまう。論理的に考えれば、それほどむつかしいことでなないんだけど・・・。この問題は、正しいものを見つけるのは簡単だ。でも、間違いを説明するのは難しい。

まず、黄疸とは何か?皮膚が黄色くなること。なぜ黄色くなるのか?黄色い色素であるビリルビンが増加するから。ビリルビンとは何か?ヘモグロビンの成分であるポルフィリン(鉄と一緒にヘムを形成する)の代謝産物だ。ビリルビンの基準範囲は0.3~1.2mg/dl。2~3mg/dl以上になると皮膚が黄色くなる。ということで、(5)が正解。以上。

せっかくだから、もう少しビリルビンの話をしよう。古くなった赤血球は脾臓で破壊される。そのときできるアミノ酸や鉄は再利用されるが、ポルフィリンの代謝産物であるビリルビンは体外に捨てられる。まず、脾臓でできたビリルビンは水に溶けにくいのでアルブミンと結合して肝臓に運ばれる。肝臓でグルクロン酸抱合をされて水に溶ける形になって胆汁中に排泄される。胆汁と一緒に腸内に排泄されたビリルビンは腸内細菌の作用でウロビリノーゲンになる。このウロビリノーゲンは便の色だ。ウロビリノーゲンは小腸で再吸収されて肝臓に帰り、再び胆汁中に排泄される。これを胆汁色素の腸肝循環という。

ビリルビンを測定するとき、血清に試薬を加えて直接測定できるのは抱合型ビリルビンだけだ。よってこれを直接ビリルビンという。グルクロン酸抱合される前のビリルビンは、測定試薬をくわえる前に、前処置をして総ビリルビンとして測定し、総ビリルビンから直接ビリルビンを引き算して求める。このように非抱合型ビリルビンは直接測定できないので、間接ビリルビンという。正常血清の基準値は直接ビリルビンが0~0.3mg/dl、間接ビリルビンが0~0.8mg/dlで、両方とも存在する。

さて、いよいよ黄疸の鑑別診断だ。閉塞性黄疸とは胆道の閉塞により、胆汁中に排泄された直接ビリルビンが血液中に逆流してきたものと考えればいいので、増加するのは直接ビリルビンだ。溶血性黄疸とは赤血球の破壊が亢進した状態だから肝臓のグルクロン酸抱合の能力を超えてビリルビンが産生されて血液中に停滞すると考えればいいので、増加するのは間接ビリルビンだ。新生児黄疸では、肝臓の機能が未熟なためにグルクロン酸抱合が十分に進まないと考えればいいので、増加するのは間接ビリルビンだ。ついでに、肝細胞性黄疸では肝臓での取り込み、抱合、胆汁中への排泄が障害されるので、直接ビリルビンと間接ビリルビンの両方が増加する。

もうひとつついでに尿中ビリルビンのことも話しておこう。直接ビリルビンは水に溶けるので糸球体で濾過されて尿中に排泄される。間接ビリルビンはアルブミンと結合しているので糸球体で濾過されず、尿中には排泄されない。よって、尿検査でビリルビンが陽性の場合は、血液中の直接ビリルビンが増加していると考えればよい。

正解(5)
by kanri-kokushi | 2006-01-30 09:35 | 第18回国家試験 | Comments(0)