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臨床栄養学

31132 循環器疾患とその栄養管理に関する組合せである。正しいのはどれか。1つ選べ。

1)狭心症 - 低カリウム食

2)脳出血 - 減塩食

3)うっ血性心不全 - 低リン食

4)心房細動 - 低脂肪食

5)高血圧 - 高炭水化物食


1)× 狭心症 - バランスの良い食事

 狭心症は、冠動脈の狭窄による心筋組織の一過性、可逆性の虚血によって発症する。冠動脈狭窄の主な原因は、粥状硬化巣での血栓形成と冠動脈攣縮である。栄養管理は、動脈硬化症の危険因子(死の四重奏)である糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満の管理が中心となる。いずれも適正なエネルギー、適正なPFCバランス、過不足のないビタミン・ミネラルの摂取が基本である。低カリウム食にする理由はない。低カリウム食は、腎不全で高カリウム血症が出現しているときの栄養管理である。


2)○ 脳出血 - 減塩食

 脳出血の栄養管理は、嚥下障害への対策が主体となることから、経腸栄養など投与経路の選択や誤嚥防止のための食形態の選択が重要になる。また、高血圧の管理のため減塩食にする。食事が関係する危険因子は、高血圧、糖尿病、心臓病、脂質代謝異常、飲酒であるが、特に高血圧は脳卒中と関係が深く、脳卒中の危険は、至適血圧(110119mmHg)に対し、軽症高血圧で(140159mmHg)約3倍、中等度・重症高血圧で(160mmHg)約7倍になる。ただし、高血圧の栄養管理は、(5)で説明する通り、減塩食だけではないことを覚えておこう。


3)× うっ血性心不全 -減塩食

 心不全は、心臓のポンプ機能の低下により静脈から帰ってきてた血液を動脈に十分に送り出すことができない状態である。その結果、静脈系に血液がうっ滞する。左心不全の場合は、肺水腫が起こり、右心不全の場合は、全身の浮腫が起こる。低拍出量のため、腎血流が減少しレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系が活性化する。その結果、さらに体液量が増加し悪循環が起こる。栄養管理では、体液量を減少さえるため、減塩食にする。低リン食は、腎不全で高リン血症が出現しているときの栄養管理である。


4)× 心房細動 - バランスの良い食事

 左右の心房は、洞結節からの興奮が心房全体に伝導され収縮する。洞結節は心房の収縮のペースメーカーになっている。これが、何らかの原因で洞結節以外の場所で興奮が不規則に発生すると、心房内の興奮の伝導の秩序が乱れ、規則正しい収縮ができなくなり、心房全体がブルブル震えるように痙攣した状態になる。これが心房細動である。心房細動では、心房内で血栓ができやすく、それが脳血管に塞栓して脳梗塞を起こします。しかし、心房細動がある人全員に起こるわけではなく、高血圧や糖尿病などを合併しているときに起きやすいといわれている。よって、心房細動の栄養管理は、生活習慣病予防の栄養管理と同じバランスの良い食事でよい。脳梗塞予防にためにワルファリンを服用している場合は、ビタミンKを過剰に摂取しないようにする。ただし、食事摂取基準に示されている範囲であれば、ワルファリンの作用を減弱させることはないので、むやみに制限する必要はない。


5)× 高血圧 - 減塩食

 高血圧の成因は遺伝因子と環境因子に分けられる。遺伝因子は、アンギオテンシノーゲン、アンギオテンシン変換酵素など水分・Na代謝に関連した遺伝子の異常が知られているが、高血圧患者の90%以上を占める本態性高血圧症の原因遺伝子は不明である。環境因子は、食塩過剰摂取、カリウム摂取不足、肥満、飲酒習慣、運動不足、ストレスである。よって、高血圧の栄養管理は、減塩食、野菜果物の積極的摂取、減量のための低エネルギー食、節酒である。減塩食だけではないことを覚えておこう。


正解(2


by kanri-kokushi | 2017-12-07 13:36 | 第31回国家試験 | Comments(0)