2017年 12月 12日
臨床栄養学
31-136 70歳、男性。慢性閉塞性肺疾患(COPD)である。身長170cm、体重45kg。基礎代謝量は1,125kcal/日で、半年前と比較して5kgの体重減少がみられた。栄養管理に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(2)エネルギー摂取量は、900kcal/日とする。
(3)たんばく質のエネルギー比率は、10%Eとする。
(4)脂肪のエネルギー比率は、15%Eとする。
(5)経腸栄養剤の使用は、禁忌である。
慢性閉塞性肺疾患は、慢性の咳、痰、呼吸困難を主訴とし、緩やかに進行する不可逆的な疾患である。慢性気管支炎と肺気腫の病変がさまざまな程度に存在する。慢性気管支炎とは、1年のうち3か月以上(冬季)の咳・痰が2年以上持続するものをといい、臨床症状に基づく診断である。肺気腫とは、肺胞壁の破壊により終末細気管支より末梢の気腔が拡大した状態をいい、病理組織学に基づく診断である。
中高年以降に発症し、わが国では50歳以上の男性に多い。タバコ・大気汚染などの障害性の物質に対して異常な炎症反応が起こり、非可逆性の気道閉塞が進行する。
(1)○ 高度栄養障害である。
BMI=45÷1.7÷1.7=15.6であることから、高度栄養障害である。
(2)× エネルギー摂取量は、2,295kcal/日とする。
努力して呼吸を行うために安静時エネルギー消費量が増加しており、さらに食欲低下が加わってたんぱく質・エネルギー欠乏症(protein energy malnutrition, PEM)をきたしやすい。投与エネルギーは、実測REE×1.5または予測REE×1.7とする。予測REE(安静時代謝量)を基礎代謝量の1.2倍とすると、エネルギー摂取量は、1,125×1.2×1.7=2,295 kcal/日になる。
(3)× たんばく質のエネルギー比率は、15~20%Eとする。
PEMを予防するため、高たんぱく質食にする。15~20%Eとする。骨格筋量を維持するため、分岐鎖アミノ酸を投与する。
(4)× 脂肪のエネルギー比率は、20~30%Eとする。
呼吸商が低下し、CO2産生量が少なくなるので有利とする考え方もあるが、適正なエネルギー量では、糖質と脂質の比率はCO2産生量に影響しないという報告もある。よって、日本人食事摂取基準に従って、脂肪のエネルギー比率は、20~30%Eとする。
(5)× 経腸栄養剤の使用は、適応である。
経口栄養の不足を補うために使用する。
正解(1)