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臨床栄養学

18-20.肥満に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)インスリン分泌が低下する。
(2)脂肪細胞のインスリン受容体が増加する。
(3)インスリン感受性が低下する。
(4)呼吸商が上昇する。
(5)レプチンの分泌が低下する。

昨年の4月にメタボリックシンドロームの診断基準が発表されてから、テレビ・新聞などでよく目にしたり、耳にしたりするようになった。これからの生活習慣病対策の重点項目として、これまでの検診では見逃されていた、ごく軽度の検査値の異常をすくい上げ、検診後の指導を強化することがいわれている。このような背景には、脂肪細胞は単なる脂肪の貯蔵臓器ではなく、活発な内分泌活動をする臓器で、動脈硬化症の進展と深い関係があることが解明されてきたことがある。

心筋梗塞や脳卒中など動脈硬化性疾患の予防管理として、従来、主要な危険因子である高コレステロール血症の管理に重点が置かれていたが、近年、その他の危険因子の重積がより重要であることが認識されるようになった。これらの危険因子は肥満、高脂血症、糖尿病、高血圧が代表で、「死の四重奏」として有名である。なぜ、ひとりの人にこのような危険因子が重積するメカニズムとして、脂肪細胞の内分泌機能とインスリン抵抗性によって、以下のように説明されるようになった。
①脂肪細胞が肥大すると、脂肪細胞(特に内臓脂肪)からは遊離脂肪酸や腫瘍壊死因子(TNF)などが分泌され、これがインスリン抵抗性を引き起こす。
②インスリン抵抗性の結果、膵臓はより多くのインスリンを分泌する必要があり、高インスリン血症になる。
③インスリンの供給が需要に間に合わなくなれば血糖値は上昇する。
④高インスリン血症は交感神経を緊張させ、腎臓でのNa再吸収を促進するので血圧が上昇する。
⑤脂肪細胞からの遊離脂肪酸の放出増加により、肝臓でのVLDL合成が高まって血清中性脂肪値が上昇する。
⑥インスリン抵抗性のためにVLDLの代謝が障害され、HDL-Cの低下、VLDLレムナントの増加、小型・緻密LDLの増加など脂質代謝異常が出現する。
⑦肥大した脂肪細胞から分泌されるレプチンは交感神経を緊張させるので血圧を上昇させる。

(1)肥満によるインスリン抵抗性に打ち勝つために、インスリン分泌は増加する。

(2)高インスリン血症になると細胞表面のインスリン受容体はダウンレギュレーションを受けるので減少する。この問題文はちょっと難しいかな。一般に、血液中にホルモンがたくさんあるときは、細胞は必要以上に刺激を受けないように受容体を引っ込めるという性質があることを覚えておこう。

(3)肥満による健康障害の中心になる病態はインスリン抵抗性だ。すなわち、細胞がインスリンに反応しにくくなっている状態で、これをインスリン感受性の低下ということもある。

(4)肥満者では、一般に脂質が燃焼する割合が増加していることから、呼吸商は低下する。

(5)レプチンは体重を一定に保つよう食欲を調節するホルモンだ。脂肪細胞が肥大するとレプチン分泌が増加して、視床下部の食欲中枢を抑制して体重をもとに戻す方向に働く。

正解(3)
by kanri-kokushi | 2006-02-01 11:14 | 第18回国家試験 | Comments(0)