2018年 11月 30日
人体の構造と機能及び疾病の成り立ち
32-20 酵素に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)ミカエリス定数(Km)が小さいほど、酵素と基質の親和性が低い。
(2)アポ酵素は、単独で酵素活性をもつ。
(3)化学反応における活性化エネルギーは、酵素によって低下する。
(4)酵素の反応速度は、至適pHで最小となる。
(5)律速酵素は、代謝経路で最も速い反応に関与する。
(1)× ミカエリス定数(Km)が小さいほど、酵素と基質の親和性が高い。生体内の化学反応は、基質が酵素に結合することによって起こる。基質と酵素の結合のしやすさを親和性という。ミカエリス定数(Km)は、最大速度(Vmax)の半分の反応速度になる基質濃度である。つまり、Kmが小さいということは、より低濃度の基質濃度でも酵素と結合することができるので、親和性が高いということである。
(2)× アポ酵素は、単独で酵素活性をもたない。完全な酵素活性を有する酵素をホロ酵素という。「ホロ(holo-)」とは、「完全または全体」という意味の接頭語である。ホロ酵素は、アポ酵素と補因子で構成されている。ホロ酵素から補因子を取り除いたものをアポ酵素という。「アポ(apo-)」とは、「~から離れて」という意味の接頭語である。アポ酵素単独では、酵素活性はない。
ホロ酵素=アポ酵素+補因子
(3)〇 化学反応における活性化エネルギーは、酵素によって低下する。
(4)× 酵素の反応速度は、至適pHで最大となる。
(5)× 律速酵素は、代謝経路で最も遅い反応に関与する。歩く速さが速い人と遅い人が一緒に歩くためには、速い人が遅い人の速さに合わせるのと同じである。
正解(3)
ミカエリス定数(Km)についてまとめておこう。
酵素の反応速度は、以下のミカエリス・メンテンの式に従う。
反応速度(v)=最大反応速度(Vmax)×[S]÷(基質濃度[S]+Km)
この式のKmを、ミカエリス定数という。
この式に、[S]=Kmを代入すると、v=Vmax÷2となる。
つまり、基質濃度がKmのとき、反応速度は最大反応速度Vmaxの1/2になるということである。
酵素反応が起こるということは、基質と酵素が結合するということである。
基質と酵素の結合しやすさを基質親和性という。
基質親和性が低ければ(結合し難ければ)、同じ反応速度を達成するための基質濃度は高くなるのでKmは大きくなる。
基質親和性が高ければ(結合し易ければ)、同じ反応速度を達成するための基質濃度は低くなるのでKmは小さくなる。
つまり、Km値は、基質親和性を表している。