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臨床栄養学

17-18.肝臓病についての記述である。正しいのはどれか。
(1)我が国では、慢性肝炎の30%はA型肝炎ウイルスの感染による。
(2)肝硬変では、コリンエステラーゼ値が上昇し、-グロブリン濃度が低下する。
(3)肝硬変では、低インスリン血症を示す。
(4)肝硬変では、フィッシャー比が上昇する。
(5)肝不全では、意識障害などの肝性脳症が見られる。

(1)肝炎を起こすウイルスにはA型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスがある。他にもD型、E型などがあるが、まれなので、A型、B型、C型の特徴についてよくまとめておけばよい。A型は汚染された食物や水を介して経口的に感染し、急性肝炎を起こすが慢性化することはない。B型は汚染された血液・体液に接触することにより感染するが、成人で感染した場合は急性肝炎を起こすことがあるが、慢性化することは少ない。母子感染などで、乳幼児期に感染するとキャリアになり、成人になってから慢性肝炎を発症することがある。C型も汚染された血液・体液に接触することにより感染するが、成人で感染しても高率に慢性化する。我が国の慢性肝炎の原因は、C型が70%、B型が20%である

(2)肝硬変の肝機能検査は、①タンパク質合成障害(アルブミン低下、コリンエステラーゼ低下、凝固因子低下によるプロトロンビン時間延長)、②肝細胞の破壊(AST、ALT上昇)、③慢性炎症の所見(TTT、ZTT上昇、gamma-グロブリン上昇、A/G比低下)、④門脈圧亢進による脾機能亢進(汎血球減少症、特に血小板の減少)などが重要である。肝機能検査では、それぞれの検査が肝臓のどのような異常を反映しているのかを理解することが重要だ。

(3)肝硬変では門脈圧が亢進するために、本来、肝臓を通って大循環に入るべき血液が直接大循環に入ってしまう。インスリンは膵臓から分泌され、門脈を通って肝臓に入り、そこから全身に流れていくのが正常な流れであるが、肝硬変では直接大循環に入るために高インスリン血症になる。このため筋肉では高インスリン血症の作用により分岐鎖アミノ酸の取り込みが増加し、血中分岐鎖アミノ酸の濃度が低下する。

(4)芳香族アミノ酸は肝臓に取り込まれて代謝されるが、肝硬変では肝臓での取り込みが減少するために血中芳香族アミノ酸濃度が上昇する。フィッシャー比とは分岐鎖アミン酸と芳香族アミノ酸の比だから、肝硬変ではフィッシャー比は低下する

(5)肝不全とは肝臓の機能が低下し、正常な代謝を維持できなくなった状態をいう。肝臓は体内で生じた有害なアンモニアを無害な尿素に代謝する機能を持つが、この機能が低下して高アンモニア血症が出現する。アンモニアは中枢神経の機能を障害して肝性脳症を引き起こす。また、フィッシャー比の低下は脳内に入るアミノ酸のバランスを崩し(アミン酸インバランス)、脳内のアミン代謝に異常をきたす。脳内アミンは神経伝達物質として働いており、これらの以上によっても肝性脳症が起こると考えられている。

正解(5)
by kanri-kokushi | 2006-02-20 16:15 | 第17回国家試験 | Comments(0)