2019年 08月 30日
臨床栄養学
32-120 食品が医薬品の薬理効果に及ぼす影響に関する記述である。( )に入る正しいものの組合せはどれか。1つ選べ。
(a)であるワルファリンの薬理効果は、(b)を多量に含む食品を摂取することにより(c)する。
a b c
(1)抗炎症薬 - ビタミンA - 増強
(2)抗炎症薬 - ビタミンK - 減弱
(3)抗凝固薬 - ビタミンA - 増強
(4)抗凝固薬 - ビタミンK - 減弱
(5)抗凝固薬 - ビタミンK - 増強
ビタミンKは、脂溶性のビタミンで、植物由来のビタミンK1(フィロキノン)と腸内細菌由来のビタミンK2(メナキノン)がある。ビタミンKは、肝臓での血液凝固因子Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹの合成や、骨でのオステオカルシン合成に関与する。その作用機序は、タンパク質のグルタミン酸残基を修飾してγ-カルボキシグルタミン酸残基にするカルボキシラーゼの補酵素として働くことである。
ビタミンK欠乏により、血液凝固因子の合成が障害されると出血傾向が出現する。血液凝固検査では、内因系(Ⅸ)、外因系(Ⅶ)、共通系(Ⅱ、Ⅹ)の凝固因子の合成が障害されるので、プロトロンビン時間(prothrombin time, PT)と活性化部分トロンポプラスチン時間(activatedpartial thromboplastin time, APTT)の両方が延長する。血小板の異常はないので出血時間は正常である。ちなみに、PTは、主に外因系と共通系の障害で、APTTは主に内因系と共通系の障害で延長する。さらに、ちなみに血友病は内因系(ⅧとⅨ)の障害なのでAPTTは延長するが、PTは延長しない。
ビタミンK欠乏による出血傾向の代表例は、新生児メレナである。新生児メレナは、生後数日~数週間で出現する消化管からの出血による吐血や下血のことである。欠乏が高度の場合、生後24時間以内に発症することもある。重症の場合は、頭蓋内出血(特発性乳児ビタミンK欠乏症)を起こすことがある。新生児のビタミンK欠乏が起こりやすい原因として、①ビタミンKは胎盤を通過しないこと、②母乳中のビタミンK含量が少ないこと、③腸内細菌叢が未熟なため腸内細菌によるビタミンK産生が少ないことがある。予防のため、出生直後にビタミンKを経口投与する。発症時の治療は、ビタミンKを静注する。筋注は、発癌性のため禁忌である。
ビタミンK欠乏により、オステオカルシンの合成が障害されると骨粗鬆症が出現する。
血液凝固阻止薬であるワルファリンは、ビタミンKと構造が類似しているので、ビタミンKの作用を減弱する。一方、ビタミンKを多量に摂取すると、ワルファリンの作用を減弱する。
よって、(a抗凝固薬)であるワルファリンの薬理効果は、(bビタミンK)を多量に含む食品を摂取することにより(c減弱)する。
正解(4)