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臨床栄養学

32-122 薬剤とその適応疾患の組合せである。正しいのはどれか。1つ選べ。

1)エリスロポエチン製剤 - 骨粗鬆症

2HMG-CoA還元酵素阻害薬 - 胃食道逆流症

3)抗TNF-α抗体製剤 - クローン病

4)ヒスタミンH2受容体拮抗薬 - 高LDL-コレステロール血症

5)ビスホスホネート薬 - 腎性貧血


1)エリスロポエチン製剤 - 腎性貧血

 腎臓は、広い意味で内分泌組織といえる。なぜなら広い意味のホルモンを分泌するからである。それな、レニン、エリスロポイエチン、ビタミンD3つである。レニンは、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系で体液量、血圧の調節に関与する。ビタミンDは、腎臓で活性型になる。エリスロポイエチンは、腎臓組織が低酸素状態になると分泌され、骨髄の赤芽球に働きかけて赤血球の産生を促進する。腎不全によりエリスロポイエチン分泌が低下して、赤血球の産生が低下して貧血になることを腎性貧血という。よって、腎性貧血の治療では、エリスロポイエチン製剤が用いられる。


2HMG-CoA還元酵素阻害薬 - 高LDL-コレステロール血症

 体内では、アセチルCoAを材料にしてコレステロールがつくられる。まず、2つのアセチルCoAからアセトアセチルCoAができ、続いて3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルCoAHMG-CoA)ができる。ここまではケトン体が生成する経路と同じ。HMG-CoAは、HMG-CoA還元酵素の作用でメバロン酸になる。その後、何段階もあって最終的にコレステロールができるが、この代謝経路の律速酵素はHMG-CoA還元酵素である。よって、HMG-CoA還元酵素阻害薬は、体内のコレステロール合成を抑制するので、高LDL-コレステロール血症の治療に用いられれる。


3)抗TNF-α抗体製剤 - クローン病

 クローン病は、原因不明の消化管の肉芽腫性炎症性疾患である。慢性に経過し、寛解と再燃を繰り返しつつ、徐々に進行する。昭和51年、厚生省の特定疾患治療研究事業の対象疾患に指定された。登録患者数は昭和51年には128人であったが、平成25年で約38,271人となっている。1020歳代の男性に多い。男女比は231である。

 病変は、区域性で単発あるいは多発する。口腔から肛門までいずれの部位でも起こりえるが、回盲部(約50%)、結腸、直腸、肛門(35%)、小腸、上部消化管(15%)が多い。組織学的特徴は、非乾酪性類上皮細胞肉芽腫であり、回腸末端に好発し、小腸、大腸に非連続的に広がる。腸管粘膜病変の特徴は、縦走潰瘍、敷石像、飛び越し病変を形成することである。病変は粘膜にとどまらず、筋層、漿膜に、さらに腸管周囲の脂肪組織まで及び、他臓器との瘻孔を形成する。

 原因不明であるが、家族内発生があることから、何らかの遺伝因子に高タンパク食、高脂肪食、腸内細菌叢の異常など環境因子が加わって発症すると考えられている。細菌や食事抗原により刺激されたマクロファージが分泌するTNF-αにより炎症が引き起こされることがわかっている。よって、抗TNF-α抗体製剤は、クローン病の炎症を抑える薬剤として用いられる。


4)ヒスタミンH2受容体拮抗薬 - 胃食道逆流症

 胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease, GERD)は、胃液や十二指腸液の消化液が食道内に逆流して、食道粘膜を障害することによって発症する。原因としては、下部食道括約筋部圧の低下、腹圧の上昇、食道裂孔ヘルニアなどがある。

 ヒスタミンは、胃腺の壁細胞の細胞表面にあるヒスタミンH2受容体に結合して胃酸の分泌を刺激する。よって、ヒスタミンH2受容体拮抗薬は胃酸分泌を抑制するので、胃液の逆流による食道粘膜の障害も抑制されることが期待される。


5)ビスホスホネート薬 - 骨粗鬆症

 ビスホスホネート薬は、ピロリン酸と類似の構造を有することから、ヒドロキシアパタイトに強い親和性を持ち、骨の石灰化面に取り込まれる。骨組織に沈着したビスホスホネートを破骨細胞が貪食すると、破骨細胞の活動を抑制され、骨吸収が抑制される。その結果、カルシウムの沈着が増加する。よって、ビスホスホネートは、骨粗鬆症の治療に用いられる。ちなみに、食事と一緒に摂取すると、食事中のCaと塩を形成し吸収されないので、摂取後30分以上は何も食べないようにする。


正解(3


by kanri-kokushi | 2019-09-04 16:44 | 第32回国家試験 | Comments(0)