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臨床栄養学

32-125 高カイロミクロン血症の栄養管理に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。

1)炭水化物の摂取エネルギー比率は、30%E以下とする。

2)たんぱく質の摂取エネルギー比率は、10%E以下とする。

3)脂質の摂取エネルヰドー比率は、15%E以下とする。

4n-3系脂肪酸の摂取量は、制限する。

5)食物繊維の摂取量は、制限する。


 血液中の脂質(トリグリセリドとコレステロールエステル)は、リポタンパク質によって運搬される。リポタンパク質とは、コアに脂質(lipid)を入れ表層をリン脂質で包んだ小さな粒子である。表層には、タンパク質(protein)が存在することからリポタンパク質(lipoprotein)と呼ばれる。

 リポタンパク質は、粒子の比重により、カイロミクロン(chylomicron)、VLDLverylow density lipoprotein)、LDLlowdensity lipoprotein)、HDLhighdensity lipoprotein)の4種類に分類される。

 カイロミクロンは、最も大きな粒子で、最も比重が小さい。トリグリセリドを多く含む。食事に含まれる脂質を材料に小腸で合成され、末梢組織にトリグリセリドを運ぶ。トリグリセリドは、リポタンパク質リパーゼにより加水分解され、末梢組織の細胞に脂肪酸を供給する。リグリセリドが分解された残りの粒子を、カイロミクロンレムナントといい肝臓に取り込まれる。グリセロールは、肝臓に運ばれて解糖または糖新生に利用される。

 VLDLは、肝臓で合成されるリポたんぱく質で、トリグリセリドを多く含む。肝臓で合成されたトリグリセリドを末梢組織に運ぶ。VLDLに含まれるトリグリセリドもリポタンパク質リパーゼによりが加水分解され、末梢組織の細胞に脂肪酸を供給する。グリセロールは肝臓に運ばれて解糖または糖新生に利用される。トリグリセリドが分解された残りをVLDLレムナント(または中間型リポたんぱく質、IDL)という。VLDLレムナントは肝臓に取り込まれるか、肝臓の類洞において肝性リパーゼの作用を受けてLDLに変換される。

 LDLは、肝臓の類洞で肝性リパーゼの作用を受けてVLDLレムナントから変換されて合成される。コレステロールを肝臓から末梢組織へ運ぶ。末梢組織および肝臓のLDL受容体を介して細胞内に取り込まれる。末梢組織にコレステロールが十分にあるときはLDL受容体が減少してLDLの取り込みが減少する。

 HDLは、肝臓・小腸で合成されるリポタンパク質でコレステロールを多く含む。合成直後はコレステロール含量の少ない円盤状の粒子(原始HDL)であるが、末梢組織の細胞膜に存在する余分なコレステロールをLCAT(レシチン・コレステロール・アシルトランスフェラーゼ)の作用でHDL内に取りこみ、コレステロール含量の多い円形の粒子(成熟HDL)になる。成熟HDLは、肝臓に取り込まれるか、コレステロールをカイロミクロンやVLDLにわたして原始HDLに戻る。コレステロールエステル転送タンパク質(Cholesterol estertransfer proteinCETP)は成熟HDLからキロミクロンやVLDLにコレステロールを転送する酵素である。

 リポタンパク質に含まれるタンパク質をアポリポタンパク質という。アポリポタンパク質BLDLに存在し、LDL受容体に結合する。アポリポタンパク質C-ⅡはカイロミクロンとVLDLに存在し、LPLを活性化する。アポリポタンパク質EはカイロミクロンとVLDLに存在し、レムナント受容体に結合する。アポリポタンパク質A-ⅠはHDLに存在し、LCATを活性化する。

 さて、前置きはさておき、高カイロミクロン血症は、LPL欠損やC-Ⅱ欠損または不明な原因で血液中のカイロミクロン濃度が上昇したものである。カイロミクロンの材料は食物から供給されるので、その治療では、まず脂質の摂取を制限する。選択肢の中では(3)が該当する。

1)× 糖質を制限する理由はない。VLDLの増加による高トリグリセリド血症では糖質制限があるが、それでも30%まで制限する必要はない。

2)× タンパク質を制限する理由はない。

3)〇

4)× n-3系脂肪酸は、血清トリグリセリド値低下させる作用があるので、高トリグリセリド血症摂取を推奨するは、制限する理由はない。

5)× 食物繊維は、胆汁酸と結合して便に排泄されるため、胆汁酸の腸肝循環を抑制し、肝臓でのコレステロールから胆汁酸への異化が促進するので、血中コレステロール値を低下させる。また、食物繊維は、脂質の吸収を抑制することが期待されるので制限する理由はない。


正解(3


by kanri-kokushi | 2019-09-06 16:41 | 第32回国家試験 | Comments(0)