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臨床栄養学

17-23.腎機能とその障害による症状に関する組合せである。正しいのはどれか。
(1)尿素・尿酸・クレアチニン排泄 - 高窒素血症
(2)酸塩基平衡 - 貧血
(3)レニン産生 - 骨障害
(4)エリスロポイエチン産生 - 不整脈
(5)ビタミンD活性化 - 高血圧

腎臓の機能は何か?と問われた場合、皆さんはいくつあげることができるだろうか。①濾過機能(老廃物の排泄)、②水・電解質の調節(体液量、Na、K、P、Caなど)、③酸塩基平衡(H+、HCO3-)、④内分泌機能(レニン、エリスロポイエチン、ビタミンD)、といった具合にすらすら出てくれば問題ない。出てこない場合は、今日覚えてしまおう。

(1)まず、濾過機能。何を濾過するのか?血液を濾過して体内の老廃物を尿として体外に排泄する。老廃物とは何か?細かくはいろいろあるが、体内の構成成分が代謝されたものと考えればよい。糖質が代謝されると水と二酸化炭素になる。脂質が代謝されても水と二酸化炭素になる。代謝水は1日300mL程度だし、二酸化炭素は肺から排泄されるので腎臓に障害があっても体内に蓄積することはない。問題はタンパク質、アミノ酸、クレアチン、核酸など窒素を含む化合物だ。窒素を含む老廃物の大部分は腎臓から排泄される。よって、腎臓の機能が障害されると血液中の窒素を含み化合物の濃度が上昇する。これを高窒素血症という。窒素を含む老廃物でもっとも多いものは尿素だ。よって、腎不全では高尿素窒素血症になる。これが更に進んで、腎不全のいろいろな症状が出てきた状態を尿毒症という。

(2)私たちは毎日たくさんの栄養素を摂取し、体内で燃焼させてエネルギーを取り出して生きている。その結果として、1日に15,000~20,000mEq程度の酸が体内で産生される。このうち大部分は肺から二酸化炭素として排泄されるが、50~100mEq程度は腎臓から排泄される。腎臓の機能が低下すると酸の排泄が減少するので、血液のpHは低下する。過剰な酸は血液中のHCO3-により緩衝される。よって、腎不全では代謝性アシドーシスになるが、代謝性アシドーシスはHCO3-の減少により診断することができる。HCO3-はH+と結びついてH2CO3になることにより緩衝作用を表す。生成したH2CO3はH2OとCO2になって、CO2は肺から排泄されるのでpHの低下は最小限に抑えられる。これを代謝性アシドーシスの呼吸性代償という。

(3)(4)(5)腎臓の内分泌機能について、もう説明は要らないだろう。腎不全では腎臓の血流が減少するのでレニン分泌は増加し、レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系を介して体液量を増加させ、血圧を上昇させ、高血圧が出現する。エリスロポイエチンは骨髄に働いて赤血球の増殖と分化を促進するホルモンであるが、腎不全では分泌が減少して貧血になる。腎不全で出現する貧血が鉄剤の投与に反応しない理由はここにある。ビタミンDは肝臓と腎臓で水酸化され活性型になる。活性型ビタミンDは小腸でのCa吸収を促進する。腎不全では活性化が障害されるので、低Ca血症になり、骨塩量が減少して骨粗鬆症骨軟化症になる。

正解(1)
by kanri-kokushi | 2006-02-27 10:12 | 第17回国家試験 | Comments(0)