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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

34-32 内分泌疾患に関する記述である。最も適当なのはどれか。1つ選べ。

1)抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)では、高ナトリウム血症がみられる。

2)バセドウ病では、血清甲状腺刺激ホルモン(TSH)値の上昇がみられる。

3)原発性甲状腺機能低下症では、血清クレアチンキナーゼ(CK)値の上昇がみられる。

4)クッシング症候群では、低血糖がみられる。

5)原発性アルドステロン症では、高カリウム血症がみられる。


×(1)抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)では、低ナトリウム血症がみられる。

 抗利尿ホルモンは(ADH, antidiuretic hormone)は、下垂体後葉から分泌されるホルモンで、腎臓の集合管に働いて水の再吸収を促進する。不適合分泌(不適切分泌ともいう)とは、必要以上に分泌されることである。その結果、体内に水が過剰に貯留し状態になることで起こる症候群(SIADH, syndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone)である。水が過剰になるので血液が薄められて低ナトリウム血症が出現する。

 原因としては、ADH分泌調節機構の異常(視床下部の浸透圧受容体の異常、動脈の圧受容体の異常、肺炎などによる炎症性サイトカインによるAVP分泌過剰など)や異所性ADH分泌腫瘍(肺癌が多い)がある。


×(2)バセドウ病では、血清甲状腺刺激ホルモン(TSH)値の低下がみられる。

 バセドウ病は、甲状腺濾胞細胞上のTSH受容体に対しする自己抗体によって引き起こされる自己免疫疾患である。自己抗体は、甲状腺を持続的に刺激して甲状腺ホルモンを過剰に分泌させる。血液中の甲状腺ホルモン濃度が上昇すると、下垂体に対する負のフィードバック調節がかかり、甲状腺刺激ホルモン(TSH, thyroid stimulating hormone)の分泌は抑制される。その結果、血中TSH濃度は低下する。


〇(3)原発性甲状腺機能低下症では、血清クレアチンキナーゼ(CK)値の上昇がみられる。

 甲状腺機能低下症では、内分泌性ミオパチーを起こし、筋痛や筋力低下が出現することがある。クレアチンキナーゼは筋肉細胞に多く含まれる酵素なので、ミオパチーでは細胞外に逸脱して血中濃度が上昇する。


×(4)クッシング症候群では、高血糖がみられる。

 クッシング症候群は、コルチゾールの過剰産生・分泌により、中心性肥満、高血圧、耐糖能異常、骨粗鬆症など特徴的な症状が出現する疾患である。コルチゾールは、肝臓の糖新生を促進することに加えて、インスリン抵抗性を引き起こすことにより血糖値を上昇させる。


×(5)原発性アルドステロン症では、低カリウム血症がみられる。

 アルドステロンは、腎臓の皮質集合管に働いてNa再吸収とK排泄を促進する。アルドステロンは、集合管上皮細胞の基底膜側の細胞膜のNa-Kポンプを活性化し、管腔側の細胞膜のNaチャネルとKチャネルを増加させる。Na-Kポンプにより細胞内のNaが間質に汲み出され細胞内のNa濃度が低下すると集合管の管腔内のNaNaチャネルを通って細胞内へ入ってくる。一方、Na-Kポンプにより細胞内K濃度が上昇するとKチャネルを通って集合管の管腔内へ出ていく。こうしてKが尿中へ排泄されて低カリウム血症になる。


正解(3


by kanri-kokushi | 2023-02-06 22:00 | 第34回国家試験 | Comments(0)