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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

20-39.腎臓の機能に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)腎臓の近位尿細管より、レニンが分泌される。
(2)甲状腺ホルモンにより、活性型ビタミンDの産生が促進される。
(3)糸球体濾過値(GFR)の正常値は、約50mL/分である。
(4)慢性腎不全では、エリスロポイエチンの産生が亢進する。
(5)バソプレシン分泌が低下すると、低張尿となる。

腎臓についてこれまで解剖生理学と臨床栄養学で出題されてきたもの足して2で割ったような問題だ。難易度も従来どおりで、特に目新しい傾向はない基本的な問題だ。

①腎臓の内分泌機能
腎臓の内分泌機能であるレニン、エリスロポイエチン、ビタミンDの3つは必ず覚えよう。
まず、レニン。これはレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系を構成して体内のNa量と体液量を調節する。体液量減少→循環血液量減少→腎血流量減少→糸球体傍細胞(糸球体の輸入細動脈の平滑筋層に存在する細胞)からレニン分泌促進→アンギテンシン活性化→アルドステロン分泌促進→腎臓の皮質集合管でのNa再吸収とK排泄亢進→体内Na量増加→体液量増加、ということが起こる。アンギオテンシン活性化(アンギオテンシン変換酵素)のところを端折ったので教科書でよく復習しておこう。腎不全ではレニン分泌が増加するので高血圧になる。
次に、エリスロポイエチン。これは腎臓の尿細管周囲の間質細胞から分泌されると考えられている。腎臓組織の酸素分圧の低下が刺激になって分泌が促進され、骨髄に働いて赤血球産生を促進する。体内のエリスロポイエチンの85%は腎臓から分泌されるが、残りの15%は肝臓から分泌されている。腎不全ではエリスロポイエチン分泌が低下するので貧血になる。肝臓に代償機能はない。
最後に、ビタミンD。体内で産生されたビタミンD3(コレカルシフェロール)または食品由来のビタミンD2(エルゴカルシフェロール)は肝臓で25位が水酸化され25-OHビタミンDとなり、続いて腎臓で1位が水酸化され活性型の1,25-OHビタミンDとなる。腎臓でのビタミンD活性化を促進するホルモンは上皮小体から分泌されるパラトルモンである。パラトルモンは血中Ca濃度低下が刺激になって分泌され、骨の吸収促進、腎臓のCa再吸収促進、ビタミンD活性化促進による小腸でのCa吸収促進を介して血中Ca濃度を上昇させる。腎不全ではビタミンDの活性化が障害されるので骨粗鬆症骨軟化症になる。

②腎臓の濾過機能
腎臓の濾過機能と尿の生成に関する数値は大体でいいから覚えておく必要がある。まず尿量は1日1.5L。1日の飲水量が約1.5Lで、飲んだだけが尿に出ると覚えておけばいいね。次は、糸球体濾過値(GFR)。GFRの99%が再吸収されて、1%が尿中に排泄されると覚えておけば、GFRは約150L/dayになり、単位をmL/分に直すと約100mL/分になる。腎不全では、GFRが70ml/分以下になる。

③腎臓の集合管に働いて体液量・Na量を調節するホルモン
まず、バソプレシン。これは体液量が減少したときに下垂体後葉から分泌され、集合管での水の再吸収を促進して、体内の水分が尿中に失われるのを防ぐ。結果として尿は濃縮される。濃縮されれば尿の浸透圧は高くなる。すなわち高張尿になる。バソプレシンの分泌が低下すると水の再吸収が低下するので多量の低張尿が出るようになる。これを尿崩症という。
次に、心房性Na利尿ホルモン。これは体液量が増加したときに右心房から分泌されるホルモンで、集合管でのNa再吸収を抑制する。その結果尿量が増加して、体液量が減少する。
最後にアルドステロン。これは①で説明したとおり。

正解(5)
by kanri-kokushi | 2006-04-24 12:42 | 第20回国家試験 | Comments(0)