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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

20-44.神経症状を伴う大球性貧血である。正しいのはどれか。
(1)悪性貧血
(2)再生不良性貧血
(3)自己免疫性溶血性貧血
(4)鉄欠乏性貧血
(5)葉酸欠乏性貧血

貧血の診断に関する基本問題である。貧血の診断は、①ヘモグロビン値は減少していないか?②減少しているとすると赤血球の大きさは大きいか?普通か?小さいか?③1つの赤血球に含まれるヘモグロビンの量は多いか?普通か?少ないか?という順番で見ていく。このときに必要な検査データがウイントローブの赤血球恒数(MCV、MCH、MCHC)である。いずれも赤血球数、ヘモグロビン値、ヘマトクリット値から計算される。実際の計算方法をここで説明するスペースはないので、後で教科書をみて確認しておこう。

①貧血か否か?
貧血は血液中のヘモグロビン濃度が低下して酸素を組織に十分に供給できなくなった状態をいう。国民栄養調査の基準では男性14g/dl未満、女性12g/dl未満である。WHOの基準では男性13g/dl未満、女性12g/dl未満、小児・妊婦では11g/dl未満である。

②大球性か?正球性か?小球性か?
ヘマトクリットを赤血球数で割って、赤血球1つの体積を求めたものがMCVである。MCVが基準範囲にあるものを正球性、基準範囲より大きいものを大球性、基準範囲より小さいものを小球性という。小球性ではヘモグロビン量も少なく、小球性低色素性貧血と呼ばれる。大球性ではヘモグロビン量も多く、大球性高色素性貧血と呼ばれる。大きさもヘモグロビン量も基準範囲にあるものは正球性正色素性貧血と呼ばれる。

③大球性高色素性貧血の原因は?
なぜ大球性高色素性になるかというと、骨髄の中で赤血球が作られるときに、DNAの合成が障害されて、細胞分裂が遅れたために1つ1つの赤血球が大きくなってしまう場合が多い。このような貧血の代表がビタミンB12欠乏による悪性貧血葉酸欠乏性貧血である。骨増の中に巨大な赤芽球が出現するので巨赤芽球性貧血ともいい、いずれも体内の葉酸代謝の異常により生じる。ビタミンB12はメチオニン合成酵素の補酵素なので悪性貧血ではメチオニン不足による神経障害が出現し、未治療の場合は死亡することもある。国立健康・栄養研究所の健康・栄養科学シリーズ「人体の構造と機能及び疾病の成り立ち各論Ⅱ」には、葉酸欠乏では悪性貧血のような神経障害は起こらないと書いてある。中山書店の「内科学書」にも葉酸欠乏では悪性貧血と同じ血液所見が出現するが、神経症状を欠くことが特徴であると書いてある。しかし、朝倉書店の「内科学」には葉酸欠乏でも巨赤芽球性貧血に加えて多発性神経炎などの神経障害が出現することがあると書いてある。正解は(5)もありうるとごねてもいいが、国家試験レベルでは典型的な場合を考えればよいということで、正解は(1)とする。

④小球性低色素性貧血の原因は?
小球性低色素性貧血の原因はヘモグロビン合成の障害である。ヘモグロビン合成障害のもっとも多い原因はヘモグロビンの材料である鉄欠乏である。

⑤正球性正色素性貧血の原因は?
再生不良性貧血と自己免疫性溶血性貧血は正球性正色素性貧血の代表である。

正解(1)
by kanri-kokushi | 2006-05-01 09:19 | 第20回国家試験 | Comments(0)