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臨床栄養学

20-124.薬物と食物・栄養との相互作用に関する記述である。正しいものの組合せはどれか。
a グレープフルーツの摂取により、カルシウム拮抗薬の血中濃度は低下する。
b グレープフルーツ摂取により、薬物解毒酵素が阻害される。
c ビタミンKは、ワーファリン(ワルファリン)の作用を阻害する。
d ワーファリン服用者には、納豆の摂取を勧める。
(1)aとb(2)aとc(3)aとd(4)bとc(5)cとd

 食物と薬品の相互作用について有名なところが出題されている。目新しいところはないが、食物と薬物の組合せだけでなく、その作用機序まで理解しておく必要があるようだ。来年に向けて、この分野の準備は大変そうだ。

①クレープフルーツと薬物の相互作用
 グレープフルーツは多くの薬物(カルシウム拮抗薬、HMG-CoA還元酵素阻害薬、HIVプロテアーゼ阻害薬、免疫抑制薬、睡眠導入薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、ステロイドホルモン薬など)の血中濃度の上昇させることが知られている。この作用は、主に消化管粘膜に存在する薬物解毒酵素チトクロームP450(CYP3A3)のタンパク量が減少することによると考えられている。このために、経口摂取した薬物が消化管粘膜を活性型のまま通過して血液中に吸収される量が増加して、血中濃度が増加すると考えられている。チトクロームP450は肝臓にも存在するが、グレープフルーツジュースは肝臓の酵素活性には影響しないそうだ。よって、静脈内に投与された薬物には影響しない。

②ビタミンKとワーファリンの相互作用
 ビタミンKは、肝臓で合成される血液凝固因子(Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ)の前駆体に含まれるグルタミン酸残基をγ-カルボキシグルタミン酸残基に変換する酵素であるカルボキシラーゼの補酵素である。γ-カルボキシグルタミン酸残基はCa2+との結合に関与することから、ビタミンK欠乏ではこれらの血液凝固因子のCa2+が結合できないために、血液凝固が障害されることになる。ワルファリンはビタミンKと構造がよく似ていることから、ビタミンKの作用に拮抗することにより、血液凝固を抑制する作用がある。脳梗塞や心筋梗塞など血栓ができやすいときに予防のために使用される。ビタミンKとワルファリンの作用は拮抗することから、ビタミンKを多く含む食品(ホウレン草、ブロッコリーなど)の摂取量が増えると、相対的にワルファリンの血液凝固抑制作用は減弱する。納豆に含まれる納豆菌はビタミンK合成能が高く、ワルファリンの作用を減弱させる

bとcが正しいので、正解は(4)
by kanri-kokushi | 2006-05-15 14:18 | 第20回国家試験 | Comments(0)