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臨床栄養学

20-144.熱傷に関する記述である。正しいものの組合せはどれか。
a 全身性の炎症が認められる。
b たんぱく質の異化は低下する。
c 血管透過性は亢進する。
d 循環動態安定後も、中心静脈栄養を継続する。
(1)aとb(2)aとc(3)aとd(4)bとc(5)cとd

 この問題は、新しいガイドラインに沿った内容なので、なかなか難しい。この問題の狙いは、クリティカルケアのところで学習する全身性炎症性反応症候群(Systemic inflammatory response syndrome, SIRS)を知っているかどうかということである。そんなもの聞いたこともないという人も多いだろう。私の授業でもこれはやっていない。でも、こうゆう形で出題されたからには、今後の授業で触れないわけにはいかないだろう。

①SIRSって何?
 SIRSとは、手術、外傷、熱傷、急性膵炎、感染症など体に重大な侵襲が加えられたときに起こる生体の防衛反応で、交感神経系の活動亢進、視床下部―下垂体-副腎皮質系のホルモン分泌増加に加えて、炎症性サイトカインの誘導が亢進して受傷部位だけでなく、全身性に炎症反応が起こる病態をいう。そのため肝臓、腎臓、肺など全身の重要臓器に影響が出て多臓器不全になる可能性があるので、すばやい対応が必要である。

②SIRSの定義は?
 1)体温38℃以上あるいは36℃以下、2)心拍数90/分以上、3)呼吸数20/分以上あるいは動脈血二酸化炭素分圧32mmHg以下、4)白血球数12,000/mm2以上あるいは4,000以下あるいは未熟顆粒球10%以上、の4項目うち2項目以上を満たすものをSIRSというが、こんな診断基準を覚える必要はない。

③SIRS時の代謝の特徴は?
 これは大事。1)エネルギー消費量は増大する、2)タンパク質の異化が亢進する、3)耐糖能が低下する、4)肝機能が低下する、などである。

④熱傷とSIRS
 熱傷とは熱による体表面の損傷で、生体の取って重大な侵襲である。受傷局所では血管透過性が亢進し、浮腫が起きる。受傷面積が広くなると、循環血液量が減少し、血圧低下、ショックなどが起きる。重症の熱傷ではSIRSも加わって、さらに危険な状態になる。

⑤SIRSを呈するような重症熱傷患者の管理
 まずは輸液により循環動態を安定化させることが重要である。それと平行して局所の処置を行う。輸液を末梢から行うか、中心静脈から行うか、電解質だけでいいか、糖質、アミノ酸をどうするか、投与カロリーをどうするかなど、決めなければいけないことはたくさんある。循環動態が安定すれば、むやみに中心静脈栄養を継続する必要はない。

aとcが正しいので、正解は(2)
by kanri-kokushi | 2006-06-25 16:06 | 第20回国家試験 | Comments(0)