2006年 07月 11日
臨床栄養学
(1)ステロイド療法が行われる。
(2)A群溶血性連鎖球菌に感染した後に起こる。
(3)腎機能が低下している場合でも、タンパク質摂取は制限しない。
(4)低コレステロール血症がみられる。
(5)利尿期には、水分管理を行わない。
①腎炎とは何か?
まずは、腎炎の理解から。腎炎とは何か?腎臓の炎症である。炎症とは局所の障害に対する生体の防御修復反応である。といっても何のことかよくわからないが、この反応の主役は白血球(免疫担当細胞)である。きちんと理解したい人は病理学の教科書を読もう。とりあえずの単純な理解としては、組織に何らかの障害が起こったときに、白血球が集まってきて障害の原因になっている因子(例えば病原菌)を排除し、修復するということである。困ったことは、炎症の最終的な目的は組織の修復にあるけれど、炎症の過程では、一時的に組織の障害がひどくなって、生体に苦痛をもたらすことがあるということだ。
②糸球体腎炎とは何か?
さて、糸球体腎炎。糸球体に起こる腎炎だ。つまり糸球体に何らかの障害か起こり、それを修復するために白血球が集まってきて、炎症が起こり、その過程で、腎臓の機能が障害されるということだ。何らかの障害とは何か?主な原因は免疫グロブリンが糸球体に沈着する免疫複合体型腎炎と考えて差し支えない。沈着する免疫グロブリンの種類と場所によりいくつかに分類される。例えばIgAがメサンギウム細胞に沈着すればIgA腎症が起こる。詳しくは教科書を見ること。とりあえずの単純な理解としては、糸球体に引っかかった免疫複合体に補体が結合し、それが白血球を呼び寄せて炎症を起こし、その結果、糸球体の組織に障害が発生して、腎臓の機能が低下するということだ。
③急性糸球体腎炎とは何か?
いよいよ、急性糸球体腎炎。簡単に言えば、糸球体腎炎が急に起こることである。どれくらい急かというと、数日~数週間の単位で病態が進行するものをいう。原因としてはA群β溶血性連鎖球菌が上気道に感染して、1~2週間後に起こるものが最も多い。よって(2)が○。のどに感染した病原菌に対する抗体が産生され、その免疫複合体が糸球体に引っかかると思えばよい。糸球体には病原菌は存在しない。主な症状は、全身倦怠感、乏尿、血尿、タンパク尿、浮腫、高血圧である。小児の場合は100%近くが治癒するが、成人では60~80%が治癒し、残りは慢性化する。
血清コレステロールと腎疾患の関係でよく知られているのはネフローゼ症候群、慢性腎不全、透析患者において高コレステロール血症が出現することである。急性糸球体腎炎でコレステロールがどうなるかということは見た範囲の教科書には書いていなかった。おそらく特異的な変化ないと思われる。少なくとも低コレステロール血症になることはないだろう。
④急性糸球体腎炎の治療方針は?
治療の原則は安静と食事療法である。食事療法の原則は高エネルギー・低タンパク・減塩食である。乏尿期はもちろん、利尿期でも、まだ腎機能は回復していないので、水分の管理が必要である。水分管理の基本は、「前日の尿量+不感蒸泄量」である。回復期に入れば制限する必要はなくなる。高血圧や浮腫がある場合は利尿薬を使用する。ステロイド療法は行わない。ステロイド療法はネフローゼ症候群や慢性糸球体腎炎で行われることがある。
正解(2)