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生化学

17-100.酵素に関する記述である。正しいものの組合せはどれか。
a 酵素の基質特異性とは、一つの基質に複数の酵素が反応することである。
b 拮抗阻害とは、酵素の基質によく似た構造を持つ化合物で生じる阻害である。
c 酵素は、それが触媒する反応様式によって分類されている。
d 補酵素とは、酵素活性の阻害作用をもつビタミンや金属イオンにことをいう。
(1)aとb(2)aとc(3)aとd(4)bとc(5)cとd

酵素の性質に関する基本的問題だ。基本的な用語の定義をしっかり理解しておけば簡単に解けるぞ。

①酵素とは?
 まず、酵素とは何か理解しておこう。水と二酸化炭素をビンに入れて振り回しての炭水化物はできない。つまり、化学反応は常温・常圧ではめったに起こらない。でも植物は常温・常圧で水と二酸化炭素から炭水化物を作ることができる。砂糖をビンにつめて振り回して水と二酸化炭素にはならない。火をつけて燃やせば分解できる。これは、化学反応を起こすためには外からエネルギーを注入する必要があることを示している。化学反応が起こるために必要なエネルギーを活性化エネルギーという。私たちの体の中では、常温・常圧で炭水化物が分解されて水と二酸化炭素になる。この活性化エネルギーはどこから来るのか。酵素である。炭水化物が酵素に結合すると炭水化物の分子が少しゆがむ。すると、普通では大きな活性化エネルギーがないと起こらないような化学反応が、少しの活性化エネルギーで起こるようになる。これを酵素の触媒作用という。

②基質とは?
 物質Aが酵素の作用で物質Bに変化したとき、物質Aをこの酵素の基質、物質Bを生成物という。基質は酵素と結合することにより化学反応を起こすようになる。基質と酵素の関係は、鍵と鍵穴の関係で理解すると良い。基質が結合する部位を活性中心(または触媒部位)とよぶ。ある酵素の結合することができる基質は1種類だけあることを基質特異性という。よって、aは×。

③酵素の阻害とは?
 酵素の作用を邪魔する薬を阻害薬という。現在、多くの阻害薬が医薬品として利用されている。これらの薬をどうやって酵素の作用を邪魔しているのだろうか。まず、酵素の基質とよく似た構造をした物質で基質が酵素の活性中心に結合するのを邪魔する方法。これを拮抗阻害(または競合阻害)という。次に、阻害薬が活性中心とは別の場所に結合して、その結果酵素の形が少し変化して、基質が酵素の活性中心に結合できなくする方法。これを非拮抗阻害(または非競合阻害)という。よって、bの説明は正しいので○。

④酵素の分類方法は?
 酵素が100種類あれば、触媒する化学反応も100種類ある。体内ではたくさんの化学反応が起こっているが、酸化還元反応、転移反応、加水分解反応など化学反応の種類により分類することができる。よって、cは○。

⑤補酵素とは?
 酵素と結合して酵素の触媒作用を助ける物質を補酵素という。活性をもつ酵素と補酵素の複合体をホロ酵素という。ホロ酵素から補酵素を取り去った残りのタンパク質部分をアポ酵素といい、酵素活性を失う。ビタミンB群には補酵素として働くものが多くある。よって、dは×。
 ちなみに金属がないと活性を示さない酵素を金属酵素というが、その金属を補酵素とはいわない。

正解(4)
by kanri-kokushi | 2006-08-25 19:18 | 第17回国家試験 | Comments(0)