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解剖生理学

16-81.筋収縮に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)筋収縮のエネルギー供給には、クレアチンリン酸は関与しない。
(2)筋収縮に関与するのは、太いアクチンと細いミオシンの筋原線維である。
(3)筋収縮はアクチンフィラメントがミオシンフィラメントの間に滑り込むことによって起こる。
(4)筋収縮で生じた乳酸は、肝臓でトリグリセリドに再合成される。
(5)筋収縮に際して筋小胞体内へのカルシウムの取り込みが起こる。

 骨格筋の構造と筋収縮の仕組みに関する頻出問題だ。基本を理解しておけば難しいところは何もない。

①骨格筋線維とは?
 骨格筋は細長い骨格筋線維がたくさん束になって形作られている。1本の骨格筋線維の直径は20~100μmだが、長さは数cmの巨大な細胞である。細胞の表面には多数の核が点在している多核細胞である。骨格筋線維は細胞だから細胞膜で包まれているが、骨格筋繊維では細胞膜のことを筋鞘(キンショウ)と呼ぶ。要するに刀の鞘(サヤ)のようなものだ。

②筋原線維とは?
 骨格筋線維の中には数百から数千の筋原線維が束になって詰まっている。筋原線維の収縮単位を筋節といい、規則正しく並んでいるために横縞が見える。この縞模様を骨格筋の横紋という。よって、骨格筋は横紋筋である。筋節を構成する線維は太いミオシンフィラメント細いアクチンフィラメントである。フィラメントとは細い線維のことだ。ミオシンとアクチンのどちらが太いか細いかすぐに忘れてしまいそうだが、過去の国家試験の頻出問題なのでどうしても覚えておくしかない。文字で覚えるのでなく、イメージで覚えるために必ず教科書の図を見ておこう。

③筋収縮のメカニズムは?
 教科書の図を見ながら、以下の文章を読んでほしい。筋節は太いミオシンフィラメントと細いアクチンフィラメントが組合わさるようにしてできている。静止時、トロポニントロポミオシンがアクチンとミオシンの結合を抑制している。骨格筋が刺激されると筋小胞体に蓄えていたCa2+が細胞質中に放出される。細胞質中のCa2+濃度が上昇して、Ca2+がトロポニンに結合すると、抑制がとれてアクチンとミオシンの突起が連絡橋を形成する。続いてミオシンの突起に結合しているATPが加水分解してADPになるときに放出されるエネルギーにより突起が動いてアクチンがミオシンの上を滑走する。その後Ca2+がトロポニンから離れてアクチンとミオシンは離れる。トロポニンから離れたCa2+は筋小胞体の中に回収される。以上の過程が繰り返し起こることにより筋肉は収縮する。

④筋収縮におけるATPの役割は?
 ミオシンの突起の運動とCa2+の筋小胞体への回収(能動輸送)に消費される。

⑤筋収縮のためのATPの供給源は?
 筋肉が休んでいるとき、細胞内にあるATPを使って、クレアチンからクレアチンリン酸を合成しておく。急に筋肉を収縮させるときは、クレアチンリン酸を分解してADPからATPを生成する。これは1段階の化学反応で、しかも酸素を使わないでATPをすばやく産生できる利点がある。しかし、細胞内に蓄えていたクレアチンリン酸は運動により数秒で枯渇する。無酸素運動では、血液中のグルコースおよび筋肉内のグリコーゲンを分解して嫌気的解糖によりATPを産生する。嫌気的条件下の運動では約30秒で乳酸が蓄積して十分なATPを産生できなくなる。有酸素運動ではクエン酸回路と電子伝達系により、血液中のグルコースおよび脂肪酸を材料にして、持続的にATPを供給することができる。
 嫌気的解糖で生成した乳酸は細胞外に出て、血流により肝臓に運ばれる。肝臓では糖新生によりグルコースの合成に使われる。グルコースは肝臓から放出され、筋肉に取り込まれエネルギー源として利用される。これをコリ回路という。

正解(3)
by kanri-kokushi | 2006-10-08 14:28 | 第16回国家試験 | Comments(0)