人気ブログランキング | 話題のタグを見る

臨床栄養学

16-22.高血圧に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)拡張期血圧が70㎜Hgであれば高血圧と判定する。
(2)高血圧の予防には、ナトリウムの摂取を食塩換算で10g未満とする一方、カルシウム、マグネシウムは十分な摂取を図る。
(3)運動中は血圧が上昇するので高血圧患者では運動は禁忌である。
(4)アルコールは血管拡張作用があり、血圧を下げるので制限する必要はない。
(5)左心不全では心拍出量が増加するので血圧は上昇する。

①高血圧の診断基準
 日本高血圧学会による「高血圧治療ガイドライン2004」によると、収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上が高血圧に分類される。高血圧は程度により軽症、中等症、重症に分類し、さらに、収縮期血圧が140mmHg以上かつ拡張期血圧が90mmHg未満のものを収縮期高血圧と分類している。140/90mmHg未満についても正常高値血圧、正常血圧、至適血圧と細かく分類されている。収縮期血圧が115mmHg以上では20mmHg上昇するごとに心血管病のリスクは倍々に増加するといわれており、血圧は下げれば下げるほど良いという最近の考え方に沿ったものになっている。

②高血圧になる環境因子
 第1に食塩。食塩感受性の高血圧に人は全体の30%くらいといわれている。高齢者、肥満、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、腎機能が低下した人に多い。
 第2にK。人類が出現したころのNaとKの摂取比は1:1だったそうだ。現在の我が国では2:1程度である。KはNa排泄促進、交感神経の緊張抑制、血管拡張作用などにより血圧を下げる作用がある。
 第3に肥満。肥満は体液量の増加、インスリン抵抗性、レプチン分泌増加による交感神経の緊張増加などにより血圧を上昇させる。
 第4に飲酒習慣。アルコールは血管拡張作用により一過性に血圧を低下させる。お酒を飲むと顔が赤くなるのは皮膚の血管が拡張したからだ。しかし、長期的には飲酒習慣は血圧を上昇させることが知られている。
 第5に運動不足。心肺機能の低下、体重増加、インスリン抵抗性増加などにより血圧を上昇させる。
 第6にストレス。交感神経の緊張を介して血圧を上昇させる。

③高血圧治療のための生活習慣修正項目
 「高血圧治療ガイドライン2004」によれば、以下の生活習慣を修正することが進められている。第1に食塩制限(6g/日)、第2に野菜果物の積極的摂取、第3に適正体重の維持、第4に運動療法、第5にアルコール制限(エタノールで男性20~30ml/日以下、女性20~30ml/日以下)、第6に禁煙、である。運動療法については心血管病にない高血圧患者対象で、有酸素運動を毎日30分以上を目標にしている。

④高血圧の一次予防に有効な方法
 アメリカのNational High Blood Pressure Education Programによれば、効果が証明されている介入として、適正体重の維持、食塩制限、運動習慣、アルコール制限、K摂取、野菜・果物摂取、低脂肪食をあげている。Ca、Mg、魚油については高血圧患者では血圧をわずかに低下させる作用が認められているが、予防効果は証明されていない。その他、ハーブや植物性栄養補助食品についても有効性を示すデータはほとんどない。

⑤左心不全
 左心不全とは心臓の左心室の収縮機能が低下して血液を十分に送り出せない状態だから、当然血圧は低下する。

正解(2)
by kanri-kokushi | 2006-12-30 12:59 | 第16回国家試験 | Comments(0)