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病理学

16-91.遺伝疾患に関する記述である。正しいものの組合せはどれか。
a 糖原病(Ⅷa型を除くすべて)は常染色体性劣性遺伝疾患である。
b 血友病は常染色体性劣性遺伝疾患である。
c フェニルケトン尿症は伴性劣性遺伝疾患である。
d 家族性高コレステロール血症は常染色体性優性遺伝疾患である。
(1)aとb (2)aとd (3)bとc (4)bとd (5)cとd

①糖原病?糖尿病なら知っているけど・・・
 「糖原」ということは糖の原料ということ。つまり「グリコーゲン」のことだ。グリコーゲンの代謝に関わる酵素の先天性欠損によるもので細胞内にグリコーゲンが異常蓄積する。欠損する酵素によりO型およびⅠ~Ⅷ型に分類される。タイプによりグリコーゲンが肝臓に蓄積するもの、筋肉に蓄積するもの、全身に蓄積するものなどがある。
 さて、遺伝子の異常ということで、これらの疾患は遺伝する。ヒトの染色体は22対(44本)の常染色体と1対(2本)の性染色体(XとY)がある。対になっているということは、私たちは1つの酵素について2つの遺伝子を持っていることになる。とすると、可能性として2つとも正常な場合、1つが正常で、もう1つが異常な場合、2つとも異常な場合が考えられる。1つでも正常であれば、異常な形質があらわれないような遺伝子を劣性遺伝子という。反対に異常な遺伝子が1つでもあれば、その形質があらわれてしまう遺伝子を優性遺伝子という。疾患を起こす遺伝子が常染色体にあれば常染色体遺伝するし、性染色体にあれば伴性遺伝する。

②常染色体劣性遺伝
 常染色体の劣性遺伝子による遺伝を常染色体劣性遺伝という。この問題ではフェニルケトン尿症がこれに相当する。フェニルケトン尿症ではフェニルアラニン水酸化酵素が欠損している。ふつうは常染色体劣性遺伝といい、常染色体性劣性遺伝という言い方はあまり見ない。

③常染色体優性遺伝
 常染色体の優性遺伝子による遺伝を常染色体優性遺伝という。この問題では家族性高コレステロール血症がこれに相当する。家族性高コレステロール血症ではLDL受容体の遺伝子に異常がある。よって、dは正しい。

④伴性劣性遺伝
 性染色体の劣性遺伝子による遺伝を伴性劣性遺伝という。この問題では血友病がこれに相当する。血友病では血液凝固因子の第Ⅷ因子が欠損している。この遺伝子はX染色体上にある。女性の場合はXXで対立遺伝子があるので、異常な遺伝子が2つそろわなければ発症しない。一方、男性の性染色体はXYで対立遺伝子がないので、1つで発症する。よって、男性に集中して発症する。

⑤さて、糖原病・・・
 糖原病Ⅷa型といわれてどれくらいの人が欠損している酵素の名前を言えるだろうか?私は教科書を見るまでわからなかった。Ⅷ型はホスホリラーゼキナーゼの欠損症らしい。ホスホリラーゼはグリコーゲンを加リン酸分解してグルコース-1-リン酸を生成する酵素だ。これは知っておいてほしい。ホスホリラーゼキナーゼはホスホリラーゼをリン酸化して活性化する酵素だ。つまり、ホスホリラーゼキナーゼが欠損すると、ホスホリラーゼが活性化されず、グリコーゲンの分解が障害されるのでグリコーゲンが異常に蓄積して糖原病になるというわけだ。
 さて、このホスホリラーゼキナーゼにはいくつかアイソザイムがあるらしい。どのアイソザイムが欠損するかによって肝臓に蓄積するタイプや筋肉に蓄積するタイプ、両方に蓄積するタイプに分類されるらしい。糖原病の他のタイプは常染色体劣性遺伝するが、Ⅷ型の一部はX染色体の異常であると教科書に書いてあった。問題文のⅧa型がこれに相当するのだろう。つまり伴性劣性遺伝するということだ。よって、aは正しい。

aとdが正しいので、正解は(2)

ああ、病理学は難しい。
by kanri-kokushi | 2007-03-06 21:12 | 第16回国家試験 | Comments(0)