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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

21-36 消化器疾患とその症候に関する組合せである。誤っているのはどれか。
(1)胃潰瘍 - 吐血
(2)慢性膵炎(非代償期) - 体重減少
(3)過敏性腸症候群 - 下血
(4)急性胆嚢炎 - 黄疸
(5)肝硬変 - 手掌紅斑

①吐血
 血液を口から吐き出すことを吐血という。出血部位は食道、胃、十二指腸で口腔内からの出血は吐血とは言わない。食道の出血の場合、出血量が噴門の通過量を超えると吐血になる。胃の出血の場合、出血量が幽門の通過量を超えると吐血になる。十二指腸と空腸の境界のトライツ靭帯より口側の出血は吐血になる可能性がある。吐血を起こす疾患には、食道静脈瘤、マロリー・ワイス症候群、急性胃炎、消化性潰瘍(胃・十二指腸潰瘍)などがある。出血後すぐに吐血すると新鮮血の吐血になるが、一定時間以上胃内に血液がとどまっていると、胃酸の作用によりコーヒー残渣様の血液を吐出する。

②体重減少
 体重が減少するということは、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスが負になっているということだ。つまり、食事の摂取量あるいは消化・吸収が減少するか、代謝が亢進して消費エネルギーが亢進する状態を考えればいい。慢性膵炎の非代償期ということは、食物の消化・吸収という膵臓の機能が果たせていないということで、体内に入ってくるエネルギーが不足するので体重が減少する。
 発熱、炎症性疾患、甲状腺機能亢進症など基礎代謝量が増加する疾患でもやせる。糖尿病は肥満の人が多いが、インスリンの作用不足が著しい時はエネルギーの利用障害が起こりやせる。その他、神経性食欲不振症のような精神的要因によってもやせる。

③下血
 肛門から血液を排泄することを下血という。出血部位は全消化管の可能性がある。出血部位が肛門に近ければ新鮮な血液が便の表面に付着する。肛門から遠ざかるに従って便と血液が混じりあい、血液も黒くなる。さらに肛門から遠くなると便と血液の区別はできなくなり、黒色便になる。十二指腸より口側の出血ではコールタールのような黒くてつやのあるタール便になることが特徴である。
 大腸の疾患としては、クローン病、潰瘍性大腸炎、腸重積、感染性腸炎、大腸癌などがある。過敏性腸症候群は腸管の機能的な過敏により下痢や便秘が起こる疾患で、潰瘍など器質的病変を伴わないことが特徴なので下血も起さない。

④黄疸
 黄疸は血液中のビリルビン濃度が上昇し、皮膚や粘膜が黄染した状態をいう。体内のビリルビンは肝臓から胆管を通って十二指腸に排泄される。黄疸は体内で大量のビリルビンが生成する状態、生成する量は変わらないが排泄経路のどこかに障害がある場合に出現するので、溶血性疾患、肝疾患、胆道疾患などが黄疸の原因になる。急性胆嚢炎では胆汁のうっ滞(胆汁の流れが悪くなること)が起こるので黄疸が起こる。

⑤手掌紅斑
 肝硬変では多くの症状が出現するが、手掌紅斑とクモ状血管腫は高エストロゲン血症のせいで血管が拡張して出現する症状である。肝硬変では肝臓の代謝機能が低下するためにエストロゲンの代謝が障害されて高エストロゲン血症になる。男性でも少量のエストロゲンが分泌されているために、肝硬変では女性化乳房になることがある。

正解は(3)
by kanri-kokushi | 2007-07-23 22:52 | 第21回国家試験 | Comments(0)