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人体の構造と機能及び疾病の成り立ち

21-49 胃全摘手術後の合併症に関する記述である。正しいものの組合せはどれか。
a 内因子欠乏 - 骨粗鬆症
b 吸収障害 - 再生不良性貧血
c 迷走神経切断による胆汁うっ滞 - 胆石症
d 下部食道括約機構の障害 - 逆流性食道炎
(1)aとb(2)aとc(3)aとd(4)bとc(5)cとd

 胃全摘手術後の合併症は急性合併症と慢性合併症に分けられる。
 急性合併症には術後出血、縫合不全、吻合部通過障害、イレウス、術後急性胆嚢炎などがある。
 慢性合併症には、胃が果たしていた機能が果たせなくなって起こるものと、胃全摘手術によって、胃の周辺の組織が損傷するために起こるものがある。

①胃が果たしていた機能の障害
(1)胃がなくなることによる症状(ダンピング症候群)
 胃は摂取した食物を一時的に蓄え、少しずつ小腸に送る機能がある。この機能が障害されて、摂取した食物が一度に小腸に入ってくることによって起こる症状をダンピング症候群という。早期症状として30分以内に腹痛、嘔吐、下痢、めまい、動悸、冷汗、手の震えなどがある。後期症状としては90分~3時間頃に反応性低血糖による症状が出現する。

(2)胃液がなくなることによる症状
 胃液には胃酸、ペプシン、内因子が含まれている。胃酸は鉄やカルシウムのイオン化に必要である。鉄とカルシウムのイオン化は十二指腸での吸収に必須である。よって、胃全摘手術では鉄とカルシウムの吸収障害が起こる。その結果、鉄欠乏性貧血と骨粗鬆症が起こる。
 内因子はビタミンB12の吸収に不可欠である。よって、胃全摘手術ではビタミンB12の吸収障害が起こる。その結果、悪性貧血が起こるy。
 再生不良性貧血は骨髄の多能性造血幹細胞の異常により、赤血球、白血球、血小板全てが減少する汎毛血球減少症が出現する。胃全摘手術とは関係ない。

②胃の周辺の組織の損傷による症状
(1)迷走神経の損傷
 迷走神経は脳神経(第Ⅹ脳神経)の1つで延髄からでて胸部と腹部の内臓に広く分布する。腹腔の臓器に分布する枝は食道の壁に沿って下降し、横隔膜の食道裂孔を通って胃に分布する枝を出しながら、肝臓、胆嚢、小腸、大腸、腎臓など腹腔臓器に枝分かれして分布する。よって、胃全摘を行ったときに、胆嚢に分布する迷走神経を傷つけてしまう可能性は十分にある。胆嚢に分布する迷走神経の機能は、胆嚢を収縮させ、胆汁を十二指腸に排泄することだから、迷走神経が切断されると胆汁の流れが悪くなり、胆汁のうっ滞が起こる。胆嚢内では胆汁が過剰に濃縮され、コレステロールが析出して胆石ができる。

(2)食道の損傷
 下部食道と胃の接合部を噴門という。下部食道には括約筋が存在し、胃の内容物が食道に逆流するのを防いでいる。胃全摘手術で下部食道括約機構が障害されると、膵液が食道に逆流し、逆流性食道炎を起こす。

正解(5)
by kanri-kokushi | 2007-09-03 10:51 | 第21回国家試験 | Comments(0)