2008年 05月 14日
臨床栄養学
(1)高キロミクロン(カイロミクロン)血症では、飽和脂肪酸の摂取を促す。
(2)高LDL血症では、食物繊維の摂取を促す。
(3)高VLDL血症では、単糖類の摂取を促す。
(4)低HDL血症では、運動制限をする。
(5)高LDL血症では、多価不飽和脂肪酸の摂取を制限する。
食品に含まれる栄養素が血清脂質にどう影響するかを問う基本問題。脂質について、「量だけでなく質も考えることが必要ですよ」ということだ。
①高キロミクロン血症
キロミクロンは、食物に含まれる脂質を小腸で吸収して合成する。キロミクロンはリンパ管を通って大循環に入る。キロミクロンの成分は80~90%が中性脂肪で、コレステロールは5%前後である。大循環に入ったキロミクロンは、リポタンパク質リパーゼ(LPL)の作用で中性脂肪が脂肪酸とグルセロールに分解され、最終的には肝臓に取り込まれる。
高キロミクロン血症の原因としては、LPL欠損症とアポリポタンパク質CⅡ欠損症を知っておけばいいだろう。
食事療法の基本は、飽和脂肪酸だけでなく、長鎖脂肪酸全体を制限する。中鎖脂肪酸はキロミクロンに取り込まれず、門脈を通って肝臓に行くので、中鎖脂肪酸の摂取を勧めることもある。
②高LDL血症
LDLはコレステロールを肝臓から全身の組織へ運ぶリポタンパク質である。飽和脂肪酸は肝臓のLDL受容体活性を低下させてLDLを血液中に停滞させるので制限する。一方、多価不飽和脂肪酸は体内でのコレステロール合成を抑制するので摂取を促す。
食物繊維は胆汁酸を便中に排泄する作用がある。胆汁酸は肝臓でコレステロールから作られる。胆汁酸の排泄が増加すれば、コレステロールから胆汁酸の合成が増加し、その結果肝臓内のコレステロールが減少し、その結果血液中のLDLを肝臓が取り込む量が増加し、その結果血液中にLDLが低下する。
③高VLDL血症
VLDLは肝臓で合成された中性脂肪を全身の組織に運ぶリポタンパク質である。摂取エネルギーの過剰(特に糖質の過剰摂取とアルコールの過剰摂取)は、肝臓での脂肪酸合成を促進し、VLDL産生が増加して高VLDL血症を悪化させる。よって糖質、アルコールを制限する。
多価不飽和脂肪酸(特にn-3系)は肝臓での脂肪酸合成を抑制するので、脂質に占める多価不飽和脂肪酸の割合を増やすようにする。
④低HDL血症
HDLは全身の余分なコレステロールを集めて回って肝臓に運ぶリポタンパク質である。一般に高VLDL血症に伴って低HDL血症が出現することが多く、食事療法は高VLDL血症と同じと考えてよい。ただし、多価不飽和脂肪酸は適量でればHDLを増加させるが、過剰になると低下することが知られているので注意が必要。他に血清HDL濃度を上昇させる方法として運動療法がある。食事制限だけではHDLは低下することが多いので、それを防ぐためにも食事療法と運動療法を合わせて実施することが望ましい。
正解は(2)