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臨床栄養学

21-149 先天性代謝異常症とその治療乳に関する組合わせである。正しいのはどれか。
(1)フェニルケトン尿症 - 中鎖脂肪酸(MCT)ミルク
(2)メープルシロップ尿症 - メチオニン除去ミルク
(3)糖原病Ⅰ型(フォン ギエルケ病) - 低糖質高脂肪ミルク
(4)ホモシスチン尿症 - 低分枝アミノ酸ミルク
(5)ガラクトース血症 - 乳糖除去ミルク

①フェニルケトン尿症
 フェニルアラニン水酸化酵素が欠損する。常染色体劣性遺伝し、新生児約8万人に1人の頻度で起こる。フェニルアラニン水酸化酵素が欠損するために、体内でフェニルアラニンからチロシンを合成できなくなる。その結果、チロシン不足が起こる。その結果、甲状腺ホルモン不足が起こって身体発育障害が起こる。その他、メラニン不足による赤毛、白皮症が起こる。さらに、DOPA,エピネフリン不足による精神発達の障害も起こる。一方、フェニルアラニンが蓄積し、フェニールピルビン酸、フェニル酢酸などの代謝産物の尿中排泄が増加し、カビ様尿臭がするようになる。治療は、診断後直ちにフェニルアラニン除去ミルクを開始する。フェニルアラニンは必須アミノ酸なので完全除去しない。

②メープルシロップ尿症
 分岐鎖ケト酸脱水素酵素複合体が欠損する。常染色体劣性遺伝し、新生児約50万人に1人の頻度で起こる。分岐鎖ケト酸脱水素酵素複合体が欠損するとケト酸からアシルCoAを合成できなくなる。その結果、ケト酸が蓄積して尿中に排泄されるために楓(メープル)シロップ臭がするようになる。症状は、生後1~2週から哺乳困難、痙攣、後弓反張、神経障害、低血糖、ケトアシドーシスなどが出現する。治療は、ロイシン、イソロイシン、バリンを制限した低分枝アミノ酸ミルクを使用する。

③糖原病Ⅰ型(von Gierke病)
 糖原とはグリコーゲンのことである。糖原病とはグリコーゲンを分解する酵素が欠損したために肝臓にグリコーゲンが蓄積して肝臓が腫大する。グリコーゲンは空腹時に分解された血糖値を維持する役割があるが、それができないために低血糖になる。欠損する酵素により分類されているが、Ⅰ型(von Gierke病)は、グルコース-6-ホスファターゼの欠損で、最も多い型である。治療は、糖質の補充により血糖値を維持して、低血糖を防ぐことが目標である。よって、高糖質低脂肪の糖原病治療ミルクを使用する。乳糖、ショ糖はグルコースとして利用できないガラクトースとフルクトースを含んでいるので制限し、糖質はグルコースとでんぷんを主成分とする。

④ホモシスチン尿症
 シスタチオニン合成酵素が欠損する。常染色体劣性遺伝し、新生児約20万人に1人の頻度で起こる。シスタチオニン合成酵素が欠損すると、ホモシステインとセリンからシスタチオニンを合成できなくなり、ホモシステインが蓄積する。ホモシスチンとはホモシステイン2分子がS-S結合したものである。血中ホモシスチンが増加した結果、ホモシスチンの尿中排泄が増加する。また、メチオニンはホモシステインから合成されるので、血中メチオニンも増加する。一方、シスタチオニンが不足するので、それから作られるシステインが不足する。症状は、水晶体脱臼、骨粗鬆症、長身、くも状指、精神運動発達遅延、痙攣、血栓塞栓症などが出現する。治療は、低メチオニンミルクを使用する。

⑤ガラクトース血症
 ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼが欠損する。常染色体劣性遺伝し、新生児約4万人に1人の頻度で起こる。ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼが欠損すると、ガラクトース-1-リン酸とUDP-グルコースからUDP-ガラクトース+グルコース-1-リン酸を合成できなくなる。つまり、ガラクトースをグルコースに変換して利用できなくなる。その結果、ガラクトースの血中濃度が増加し、嘔吐、下痢、黄疸、肝硬変、白内障、知能障害などの症状が出現する。治療は、乳糖除去ミルクを使用する。

正解(5)
by kanri-kokushi | 2008-08-29 18:07 | 第21回国家試験 | Comments(0)