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解剖生理学

17-89.味覚および嗅覚に関する記述である。正しいものの組合せはどれか。
a 味蕾の数は成長とともに増加し、20歳頃に最多となる。
b 味蕾は糸状乳頭の表面に多く存在している。
c 味蕾は舌のほか、咽頭や口蓋にも存在している。
d 嗅細胞の突起が嗅神経となる。
(1)aとb  (2)aとc  (3)aとd  (4)bとc  (5)cとd

①味蕾の数について
「成人の舌には約2,000~3,000個の味蕾があり、その数は20歳で最高に達し、それ以後徐々に減少する」と藤田恒夫・藤田尚男著「標準組織学各論(第3版)」(医学書院)に書いてあった。医学書院「標準生理学(第6版)」では、「平均5,235個」と異常に細かい。エレイン・マリーブ著「人体の構造と機能(第2版)」と丸善「ギャノン生理学(原著21版)」で、「約1万個」と書いてある。欧米の教科書には約1万個という記述が多い。人種差があるんだろうか。

②味蕾の分布について
藤田恒太郎著「人体解剖学(改定第41版)」(南江堂)には、「味蕾の存在は、成人ではほぼ有郭乳頭(壕に面する上皮)と葉状乳頭に限られるが、胎生期には、その分布範囲はもっと広くて、茸状乳頭、軟口蓋などの粘膜にも見出される」と書いてある。藤田恒夫・藤田尚男著「標準組織学各論(第3版)」(医学書院)には、「ほとんどが舌の乳頭(有郭乳頭、葉状乳頭および茸状乳頭)に存在するが、少数のものは頬、軟口蓋、咽頭、喉頭蓋などの粘膜にもみとめられる」と書いてある。丸善「ギャノン生理学(原著21版)」には、「ヒトでは味蕾は喉頭蓋や口蓋や咽頭の粘膜にあり、また舌の茸状乳頭と有郭乳頭の壁にある」と書いてあり、訳注で「舌の葉状乳頭にも味蕾がある」としている。医学書院「標準生理学(第6版)」では、「30%(1,600個)が茸状乳頭に、28%(1,480個)が葉状乳頭に、残りの42%(2,250個)が有郭乳頭に分布している」とこれまた異常に詳しい。たぶん、ある1つの論文によって記述したのだろう。

③味覚のまとめ
教科書によって微妙に記述が異なるので困るが、おおむね以下のような理解でいいと思う。
・味覚は味蕾で受容される。
・味蕾は舌の茸状乳頭、葉状乳頭、有郭乳頭に存在し、約半数は有郭乳頭に存在する。糸状乳頭には味蕾は存在しない。ちなみに、味蕾は、茸状乳頭では乳頭の頂上に、葉状乳頭、有郭乳頭では乳頭の側面に存在する。
・味蕾は頬、軟口蓋、咽頭、喉頭蓋などの粘膜にも少数だが存在している。
・味蕾の数は数千から1万程度で、20歳頃に最多となる。
・味覚を脳に伝える神経は、舌の前2/3が顔面神経(第Ⅶ脳神経)、舌の後ろ1/3が舌咽神経(第Ⅸ脳神経)、舌以外の部分が迷走神経(第Ⅹ脳神経)である。

嗅覚は鼻腔の粘膜上皮の1つである嗅細胞によって受容される。嗅細胞の粘膜面には臭毛があり、におい物質がここに付着することにより、においを感じる。においを識別するメカニズムはよくわかっていないが、においには8種類の基本臭があって、その組合せにより約2,000種類のにおいを識別できるという説がある。嗅細胞は神経細胞であり、中枢側に伸びる突起が束になったものが嗅神経(第Ⅰ脳神経)であり、嗅球に達する。

不思議なことだが、日本人が書いた教科書では味覚→嗅覚の順で記述していることが多く、欧米人が書いた教科書では嗅覚→味覚の順で記述していることが多い。日本人はにおいより味に敏感で、欧米人は味よりにおい敏感ということの表れかもしれない。

正解なし。a, c, dが正しい。
# by kanri-kokushi | 2006-03-20 10:21 | 第17回国家試験 | Comments(0)

解剖生理学

17-88.神経系に関する記述である。正しいのはどれか。
(1)交感神経末端から分泌される神経伝達物質はアセチルコリンである。
(2)運動神経に存在する神経伝達物質としてドパミンがある。
(3)有髄神経の伝達速度は無髄神経より遅い。
(4)神経線維おける興奮は両方向性に伝導する。
(5)副交感神経末端から分泌される神経伝達物質はアドレナリンである。

①神経細胞(ニューロン)の構成は?
神経の興奮の伝導に関する問題だ。神経細胞(ニューロン)神経細胞体突起から構成されている。神経細胞体には核が存在する。突起には樹状突起軸索がある。樹状突起は他のニューロンからの興奮を受け取る部位だ。軸索は他のニューロンに興奮を伝達する。

②興奮の伝導とは?
さて、ここで使っている「興奮」とは何か?一言で答えるとニューロンの細胞膜局所に発生した活動電位のことだ。活動電位とは何か?細胞の外にはNa+がたくさんあって、細胞の中にはK+がたくさんある。静止状態ではNa+は細胞内に入れないが、K+は細胞外に出て行けるので、細胞外に対して細胞内の正の電荷が少なくなってできる電位差を静止電位という。この細胞膜の局所が刺激されるとNa+が細胞内に流れ込み、細胞内外の電位差が逆転する。これを活動電位という。これは細胞膜の局所で発生する。すると、活動電位が発生した部位とその周辺で局所電流が流れ、これが刺激になって周辺の細胞膜に活動電位が発生する。こうして次々に活動電位の発生が広がっていくことを「興奮の伝導」という。興奮の伝導の方向は周辺すべての方向に伝わるが、軸索のような細い線維の場合は、最初に興奮が発生した部位から両方向に伝導される。

③有髄神経線維と無髄神経線維の伝導速度は?
軸索のことを神経線維ともいう。神経線維には髄鞘を持つ有髄神経線維と持たない無髄神経線維がある。髄鞘とはシュワン細胞が軸索に巻きついてできたものだ。髄鞘と髄鞘の間にはランビエ絞輪という隙間が開いている。髄鞘は脂質の含有量が多く、電気を通さない絶縁体の役目を果たしている。無髄神経線維では興奮を伝導する局所電流は近距離に起こるのに対し、有髄神経線維では髄鞘の部分を飛び越えてランビエ絞輪の部位に活動電位を起こすので伝導速度が速い。これを跳躍伝導という。

④シナプス伝達とは?
1つのニューロンの中では活動電位によって興奮は伝導されるが、あるニューロンから別のニューロンへ興奮が伝導されるときには細胞膜は接していないので局所電流では伝達されない。興奮を伝達する軸索の先端と興奮を受け取るニューロンの細胞膜の間には狭い間隙があって、このような構造をシナプスという。軸索の先端に活動電位が到達すると神経伝達物質が放出され、これが相手の細胞膜上にある受容体に結合して次のニューロンに活動電位を起こす。これをシナプス伝達という。軸索の電気的な伝導に比べて伝達速度は遅く、これをシナプス遅延という。シナプスの伝導は一方向性である。

⑤神経伝達物質とは?
シナプスで興奮を伝導する物質を神経伝達物質という。自律神経は節前線維と節後線維の2つのニューロンで構成されている。節前線維の神経伝達物質は交感神経、副交感神経ともにアセチルコリンであるが、節後線維では交感神経がノルアドレナリン、副交感神経がアセチルコリンである。運動神経が骨格筋とつくるシナプスの神経伝達物質はアセチルコリンである。脳内ではドパミン、グルタミン酸、GABA、エンドルフィンなど50種類以上の神経伝達物質が存在することが知られている。

正解(4)
# by kanri-kokushi | 2006-03-17 09:27 | 第17回国家試験 | Comments(0)

解剖生理学

17-87.ホルモンに関する記述である。正しいのはどれか。
(1)視床下部から分泌されるホルモンの1つがメラトニンである。
(2)バソプレシン(バソプレッシン)は腎臓の遠位尿細管における水の再吸収を促進する。
(3)カルシトニンは上皮小体から分泌されるホルモンである。
(4)副腎髄質からアルドステロンが分泌される。
(5)膵臓のbeta細胞からインスリンとグルカゴンが分泌される。

内分泌の問題は、主な内分泌器官とそこから分泌されるホルモンの名前を、まず覚えなければならない。その次に、それぞれのホルモンの標的器官(部位)と作用を覚えなければならない。難しい理屈はないが、ホルモンの種類が多いので、一つひとつ根気よく覚えていくしかない。
まず、主な内分泌器官だが、視床下部、下垂体、甲状腺、上皮小体、副腎皮質、副腎髄質、精巣、卵巣、膵ランゲルハンス島の9つがすらすら出てくるようにしよう。

①視床下部と下垂体から分泌されるホルモン
覚える順番として、まず、下垂体の前葉ホルモンから覚えるのがよい。成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体刺激ホルモン、プロラクチンの6つだ。他の内分泌器官を刺激するホルモンが多いことに気付くだろう。そのあたりが覚えるコツになる。視床下部と下垂体は下垂体門脈でつながっている。よって、視床下部からは下垂体前葉ホルモンの分泌を調節するホルモンが分泌される。成長ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン分泌抑制因子(ソマトスタチン)、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン、ゴナドトロピン放出ホルモン、プロラクチン放出ホルモン、プロラクチン放出抑制ホルモンの7つだ。「放出」と「放出抑制」があってめんどくさいね。次に、下垂体後葉ホルモンとして、オキシトシンバソプレシンの2つを覚えよう。

②甲状腺と上皮小体から分泌されるホルモン
甲状腺の濾胞上皮からは甲状腺ホルモンチロキシントリヨードサイロニン)が分泌される。
甲状腺の濾胞傍細胞からはカルシトニンが分泌される。
上皮小体からはパラトルモンが分泌される。
濾胞上皮と濾胞傍細胞、甲状腺と上皮小体の関係は教科書の絵で確認しておこう。

③副腎皮質と副腎髄質から分泌されるホルモン
副腎皮質からは電解質コルチコイドアルドステロン)、糖質コルチコイドコルチゾル)、副腎アンドロゲンデヒドロエピアンドロステロン)の3つが分泌される。
副腎髄質からはアドレナリンが分泌される。

④精巣と卵巣から分泌されるホルモン
精巣からは男性ホルモンテストステロン)が分泌される。
卵巣からは女性ホルモンエストロゲン)と黄体ホルモンプロゲステロン)の2つが分泌される。

⑤膵ランゲルハンス島から分泌されるホルモン
beta細胞からインスリンが分泌される。
alpha細胞からグルカゴンが分泌される。

(1)メラトニン松果体から分泌されるホルモンである。
(2)バソプレシンは遠位尿細管ではなくて、集合管に働いて水の再吸収を促進する。出題者はこれが正解のつもりだったのだろうが、遠位尿細管では○にするわけにはいかない。

正解なし
# by kanri-kokushi | 2006-03-16 09:36 | 第17回国家試験 | Comments(0)

解剖生理学

17-86.泌尿器形についての記述である。正しいのはどれか。
(1)腎小体と尿細管は一対で、腎臓における尿生成の最小の単位であるニューロンを形成している。
(2)血液中のグルコースは糸球体で濾過されないので、尿中に排泄されない。
(3)腎動静脈は腎門から出入りするが、尿管は腎門を通過せず直接腎盂から出る。
(4)腎臓から分泌されるホルモンには造血作用をもつエリスロポイエチンがある。
(5)腎動脈は、胸大動脈から分かれた腹腔動脈の分枝である。

腎臓の基本問題だ。どこから話そうか。定石どおり、構造→機能という順番で話そう。

①腎臓はどこにある?
腎臓は後腹壁に存在する左右一対の臓器だ。後腹壁がどこかは、教科書の絵で確認しておこう。右腎臓は肝臓があるために左腎臓より少し低い位置にある。

②腎臓はどんな形?
腎臓は握りこぶしよりやや大きく、ソラマメのような形をしている。腎臓の内側中央のへこんだ部分を腎門という。腎門からは尿管、腎動脈、腎静脈が出入りする。腎動脈・腎静脈はそれぞれ腹大動脈下大静脈から直接分枝する。

③腎臓の最小機能単位はネフロン
ネフロンは1個の腎小体と1本の尿細管で構成されている。腎小体は毛細血管が糸玉のようになった糸球体とそれを包むボーマン嚢で構成されている。尿細管はボーマン嚢に続く近位尿細管・ヘンレ係蹄・遠位尿細管で構成されている。遠位尿細管は集合管に合流し、集合管は最終的に腎盂に開口している。
腎盂は腎門の奥にある空洞で、集合管から腎盂に排泄された尿は腎盂に続く尿管を通って膀胱に運ばれ、尿道から体外に排泄される。

④腎臓の機能は?
腎臓の機能として、3つを整理しよう。まず第1に濾過機能。血液が糸球体を通過するときに、血球やタンパク質など大きなものは濾過されないが、グルコース、アミノ酸、Na、K、Caなど電解質、尿素、クレアチニン、尿酸など小さな物質は濾過される。濾過されたもののうち、グルコース、アミノ酸、Na、K、Caなど電解質、水など、体に必要なものは尿細管で再吸収される。尿素、クレアチニン、尿酸など老廃物は濃縮されて体外に排泄される。第2に水・電解質の調節機能。バソプレシン、アルドステロン、心房性Na利尿ホルモンなど水・電解質の調節にかかわるホルモンは腎臓の集合管に働いて、体内の水・電解質の吸収と排泄を調節している。第3に内分泌機能。腎臓が分泌するホルモンとしてレニン、エリスロポイエチン、ビタミンDの3つは必ず覚えておこう。レニン・ビタミンDがホルモンかどうかはホルモンの定義によるが、広い意味でのホルモンであるという理解でよろしい。それぞれのホルモンの機能を教科書で確認しておこう。

正解(4)
# by kanri-kokushi | 2006-03-15 12:39 | 第17回国家試験 | Comments(0)

解剖生理学

17-85.肝臓の機能と形態についての記述である。正しいのはどれか。
(1)肝細胞に酸素を送っているのは、固有肝動脈である。
(2)門脈は小腸で吸収したトリアシルグリセロールを直接肝臓に送っている。
(3)肝臓の右葉は左葉より小さい。
(4)胆汁は、脂肪分解酵素のリパーゼを含んでいる。
(5)肝臓は横隔膜直下の左上腹部にある。

①肝臓の位置と形
まずは、肝臓の位置から考えようか。肝臓はおなかのどの辺にある?ここで首をひねるようでは困る。肝臓は腹腔の右上部で横隔膜の直下にある。実質臓器としては体内で最大のものだ。教科書の絵で肝臓の位置と形を確認しておこう。肝臓の形が目に浮かべば、左葉が小さくて右葉が大きいことに迷うことはないだろう。

②肝臓に出入りする脈管
次に、肝臓に出入りする脈管を整理しよう。肝臓には4つの脈管が出入りする。肝臓に入る脈管は門脈固有肝動脈、肝臓から出る脈管は胆管肝静脈だ。肝臓の下面には、肝門部があって、胆管、門脈、固有肝動脈の3つが出入りしている。肝静脈だけは肝門部と別の場所から出ている。

腹部大動脈から分岐した腹腔動脈の枝のひとつである総肝動脈から分岐する固有肝動脈は酸素を豊富に含む動脈血を肝臓に供給する動脈で、肝臓に流入する血液の約30%を占めている。

門脈は、胃・小腸・大腸・脾臓・膵臓など腹腔臓器の毛細血管が集まってできた静脈で、肝臓に流入する血液の約70%を占めている。よって、消化管で吸収された栄養素の多くは門脈を通って肝臓に運ばれる。ただし、門脈を通って運ばれる栄養素の条件として、水に溶けやすい栄養素ということがある。例えばグルコールやアミノ酸は水にとけるので、小腸の上皮細胞から拡散により移動して毛細血管に入り門脈を通って肝臓に運ばれる。水に溶けにくい栄養素、例えばトリアシルグリセロール(トリグリセリド、中性脂肪ともいう)やコレステロール、ビタミンEなどは、キロミクロンという粒子になって派もばれる。キロミクロンは大きな粒子なので毛細血管の壁を通り抜けることはできない。キロミクロンはリンパ管に取り込まれる。リンパ管は合流を繰り返して最終的には胸管になって鎖骨下静脈と内頚静脈の合流部に注ぐ。つまり、小腸で吸収した脂質はキロミクロンによって肝臓を通ることなく大循環に入って全身に運ばれることになるということだ。

肝臓はもともと、十二指腸粘膜が落ち込んでできた外分泌腺である。その外分泌腺が十二指腸の壁を越えて巨大な臓器になったと考えればよい。とすると肝臓は、本来、胆汁を分泌する外分泌腺であるということができる。胆汁に含まれる成分はよく出題されるので、すべて覚えておく必要がある。
胆汁酸
 ・コレステロールから生成される。
 ・胆汁酸の90~95%は回腸で再吸収される。(胆汁酸の腸管循環)
 ・脂肪をミセル化し、消化吸収を助ける。(脂肪の消化酵素ではない)
・ビリルビン(胆汁色素)
 ・ヘモグロビンの成分であるポルフィリンの分解産物である。
 ・腸内細菌の作用でウロビリノーゲンになり、一部が再吸収される。(胆汁色素の腸管循環)
レシチン
 ・胆汁酸とともにミセルを形成し、胆汁中のコレステロールを溶存させる。
・その他、コレステロールCaなどが含まれる。

正解(1)
# by kanri-kokushi | 2006-03-14 10:10 | 第17回国家試験 | Comments(0)